第七章 今生の別れ

【登場人物】


白波 冬哉(しらなみ とうや):男性


本作の主人公。中学3年生。心にとあるトラウマを抱えている引きこもり。前章にて、目が赫くなり、さらに二刀流になって『覚醒』した。




アテン:女性


冬哉のサポートをする神様。前章にて、冬哉のことを『最強の逢魔狩り』だと言っていた。




真逢魔:男性


冬哉の逢魔が時に住まう逢魔のトップ。前章にて、冬哉と死闘を繰り広げた。




【本編】

【冬哉の逢魔が時・学校 屋上 死闘、形勢逆転】


真逢魔「・・・ふっ、(立ち上がりながら)先程は不意を突かれただけだ。剣が一本増えたところで、何かが変わるわけが・・・なっ!?」


冬哉「はあッ!(真逢魔に猛攻を仕掛ける)」


アテン「すごい・・・さっきまでとは比べ物にならない速さ・・・。」


冬哉「俺の誓いの力、舐めるなよ———!」


【冬哉、真逢魔を追い詰める】


真逢魔「何故・・・何故そこまで抗うのだ!?」


冬哉「・・・お前も、もう一人の俺ならわかるだろ。死ぬことの怖さが。俺も昔、自殺を図ったことがあった。でも、俺の心が叫んでんだ。『本当に死んでいいのか』って。」


真逢魔「・・・。」


冬哉「今なら解る。その答えが。死んでいい人間なんか、この世の中に誰一人としているわけがない。俺は(アテンを横目で見ながら)大切な人たちに生かされているんだ。そんな大切な命、一時の衝動で落としていいもんじゃねえからな。だから、俺は生きる。だが、ただ惰性で生きるだけじゃ駄目だ。俺を大切に想ってくれてる、人・・・神もいるか。まあ、何はともあれ、そいつらを今度は俺が護ってやりたいんだ。そうやって、想いってのは繋がっていくのさ。その1ピースに俺はなりたい。神様からも呆れられるほどの『優しさ』だけが取り柄の俺が唯一できる『償い』の一つとして・・・な。」


【冬哉、真逢魔に剣を向ける】


冬哉「真逢魔弱い自分を認めつつ、おさらばしなきゃならない。」


真逢魔「・・・そうか。」


【真逢魔に抵抗の意思はない】


冬哉「・・・じゃあな。もう一人の俺。」


【冬哉、真逢魔を切り裂く。真逢魔の体が徐々に消滅していく】


真逢魔「・・・フッ。(少し笑みを浮かべ、完全に消滅する)」




【冬哉の逢魔が時・学校 屋上 死闘決着後】

【冬哉の目は赫から黒へと戻り、冬哉はアテンに逢断剣を返した】


冬哉「・・・終わったな。真逢魔、最期に少し笑ってたな。あいつも、俺の事を認めてくれたってことなのかな。」


アテン「(冬哉に歩み寄る)・・・おめでとう。これで冬哉の逢魔が時は終わる。でも、油断しちゃいけないわよ。」


冬哉「・・・え?これで俺の逢魔が時は消滅するんだろ?」


アテン「これは『今回の』逢魔が時が終わっただけ。もしも冬哉が再びトラウマに苛まれるようなことがあれば、逢魔が時は再び冬哉の前に顕現する。」


冬哉「そうなのか・・・。あ、そうだ。もうアテンとは会えないのか?」


アテン「そうね・・・。でも、また冬哉が逢魔が時を顕現させたら、また会えるかもね。」


冬哉「おいおい、縁起でもねえこと言うなよ・・・。」


アテン「でも、ここでの記憶は無くなるわよ?逢魔が時ここから脱出すれば、私と出会ったことも、逢魔と闘ったことも、何もかも綺麗サッパリ忘れちゃうわ。」


冬哉「マジかよ・・・。」


アテン「・・・でも、ここから脱出しても、冬哉の魂は強くなったまま。その魂で、現実を生き抜きなさい。」


冬哉「・・・ああ!」


【会話をしているうちに、冬哉の逢魔が時がどんどん消滅していく】


アテン「・・・っと。そろそろ時間みたいね。」


冬哉「・・・なんだか、名残惜しいな。」


アテン「(小声)・・・できれば貴方に、正式な逢魔狩りになって欲しかったんだけど。」


冬哉「ん?なんか言ったか?」


アテン「・・・いえ、なんでもないわ。」


【冬哉、アテン、別れを惜しむ。が、覚悟を決めて・・・】




冬哉「・・・よし!」


アテン「それじゃあ・・・」




冬哉・アテン『・・・さようなら!』




【逢魔が時に、別れを告げた。】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る