エロゲー買った帰り道

林檎飴

序・私にとってのエロ

男として、エロに興味を持たない人間など、この世にはいない筈だ。絶対に男ならば興味がある。


無論、辿星あれきもその一員であり、高校時代も、陰キャを極めていたものの、クラスの女子にはある程度ドキマギしたことのある初心な男子であった。

よくクラスメイトに「あれきって好きな女の子とかいる?」と聞かれる度に「いや、二次元にしか興味ないし」と百パーセントの臆病で相手に嘘をついていたことは今でも忘れない。

そんな嘘くさい言い訳がよく通じたなと、今では思うのだけれど、考えてみて当時はその返しを真顔でしていたから、変にリアリティがあったのかもしれない。ならば得心いく。


実際、二次元のキャラクターを性的な目で見ることは少なくなかった。ただ、かといって別に三次元の可愛い女の子を性的な目で見ないということは断じてなかった。


席替えの時、自分の前の席に可愛い女の子が座れば誰だって嬉しい。

また授業で隣の席の可愛い女の子とコミュニケーションを強制された時なんかも嬉しい。


自分とそうやって距離が少しだけ近づいた女の子に変な親近感が湧き、そっから変にその子で妄想してしまったりもして、鬱だらけの学生生活であったが、度々そういった女子を見たときに生じる眼福なんかが、メンタルを救ったというのはよくある話だった。


思うに、二次元のキャラクターに感じる欲情というのは、リアルでの経験がベースになっていると思う。

私の性癖というのは安定しないが、よく見られる傾向として、私の拙作を見てくれている人ならご察しもつくかもしれないが、毒舌だけれどどこか大人びていてどこか幻想的な女の子が好きなのだ。


私の小学生から中学生の間まで好きだった女の子は現に毒舌であった。

それでいて、どこかフランクでどこか幻想的で、また愛らしく…………ともかく、彼女は私の性癖の地盤を固めるのに一役買ってくれた、といっても過言ではあるまい。


これは創作にも言えることだが、二次元のような非現実的物質とは基本リアルでの体験をもとにしないとクオリティの高いものにはならない。

料理もろくにできない人が、ネットで調べた情報だけでお料理小説を書けないように(実体験)、現実での視点はやはり二次元には必須なのである、と私は考えている。


だからこそ、エロゲーに登場するキャラクターというのは、シナリオライターの性癖人生が詰まっているというのは当然と言えるし、他者の人生を、エロという、普段垣間見れない視点から読み取るというのは、面白いことだと、私は思う。

赤裸々に己を表現出来るという点では、エロゲーは唯一無二の文学ジャンルなのだ。故に是非とももっと普及してほしいぜ、エロゲー文化。




***




さてここまで読んでくれた読者諸君は恐らく「でもエロを楽しみたいから買うんでしょ?そんな研究者視点はキザだよ」と思うこと必死であろう。

無論、君らの思う通り、私はそこいらも楽しみのうちに入れてエロゲー購入の旅へと出向いた。


ただ、どうしても、私の好きな作品というのは基本、ゼロ年代にエロゲーとして発売された作品の全年齢版ばかりで、有名な某泣きゲーの金字塔的ブランドのあそこだって、元は名作エロゲーのシナリオを世に発表して一世を風靡していたという話は有名だろう。

私が勝手に私淑しているゲームシナリオライターだって、元々はエロゲーのシナリオを書いていた。


結局何を言いたいのかというと、エロゲー購入は私自身の欲求処理も兼ねてはいるものの、基本的には、エロゲーはストーリーがあってこそだと思っていて、メインの楽しみはストーリーを楽しむということなのである。そこを勘違いしないでいただけると助かる。

現に、誕生日に買ったゲームの中で、単純にエロを楽しむ作品は無かった。


で、これより綴るエッセイってのは、そんな誕生日に経験した感情をカタチにしようと試みた結果、ということになる。

そも、こんな拗らせた文章を書いている作者の人間性など、ろくなものじゃないのは確かで、そういった半端な変人の抒情詩じみたエッセイなど、たいしたものじゃないかもしれない。いや、抒情詩というよりはポエムまじりの呟き日記といった方が適切かもしれないな。


しかし、エロゲーに作者の人生がきわどく詰まっているように、私なんかでも性について熟考すれば、なにか人生論とまではいかなくともパンドラの箱っぽい邪悪な作品になるのではないだろうか。


そうなりゃいいなと思って、これから本文の執筆にとりかかるとしよう。

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