囚人学校
Virtual Hitsuji
プロローグ 聖ユースティティア学園
聖ユースティティア学園。正義の女神の名前を冠するその学園は、いわゆる「学校」とは少し違う。
聖ユースティティア学園の正式名称は「国立未成年囚人収監厚生施設聖ユースティティア学園」。その名の通りこの学園の生徒たちは全員が何らかの犯罪に手を染めた未成年たちで、彼らは学生であり囚人である。そんな背景から「囚人学校」と呼ばれているこの学園は、つい最近設立されたばかりで、試験的に生徒たちに監獄の中での学校生活を経験させている。
この学園の計画は国家権力主体で秘密裏に練られ、設立が決まったときには国民の間で沢山の意見が飛び交った。その中には「罪を犯した人間の学校なんぞに税金を使うな」という反対意見も、「子供たちの更生のためには必要な計画だ」という賛成意見もあり、世論は真っ二つに分かれた。あらかじめそうなることを予想していたのか、学園の場所が一般人に知らされることは無かったが。
傷害罪から詐欺罪まで多種多様な犯罪歴を持つ未成年者たちが集められ、学生寮という名の監獄に収監され生活を送る。この学園のために集められた教員たちの経歴も様々で、警察官や検察官に自衛官、むしろ教員としての経験がある者の方が少なかった。生徒たちが囚人であるように、教員たちは看守なのだ。第一に求められているのは彼らを監視し服従させる能力であり、上手い教え方などではない。
学生たちは年齢によって三学年三クラスに分けられており、それぞれの少人数制のクラスで午前中の通常授業と午後からの適性別訓練という二種類の更生プログラムを受けている。
通常授業は一般的な高校生が学ぶような学習内容が主として構成され、いわゆる「一般教養」を身につけるために用意されている。
適性別訓練というのはこの学園ならではのプログラムで、「個々人の適性を最大限に引き出し社会復帰に生かす」ことを目的としている。例えば、傷害罪で収監された生徒に「暴力を振るうな」と言うのではなく「正しい力の使い方を教え、伸ばす」ための講座を設けたり、賭博罪で収監された生徒の「頭の回転」や「数学的能力」を伸ばし職業訓練も兼ねた実技を行ったり。
子供たちを包み込み、彼らの可能性を最大限に生かした教育を与える。そして犯罪を犯した未成年者を「健全」に育成する。それがこの学園の方針で、基本的な理念だった。
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