二十五話 すまない。下世話な話で、すまない
暗い話題で皆、意気消沈してしまったな。Vtuberの話題に戻すか。
「そうそう、収益化の申請が早くも通ったんだって?」
「うん、そうだよ。金額は低いかもしれないけど収益化自体は比較的簡単に通るの」
Vtuberの主な収入源は動画・配信に貼り付ける広告収入、リスナーから直接的にお金を貰えるスーパーチャット、企業から依頼されることでお金が稼げる案件、リスナーが加入することで月額料金を払うメンバーシップ、ボイス販売など。あとは企業なら人気次第でVtuberのグッズ販売とかコンサートとかもある。
このうち、有名なのはリスナーが推しのVtuberに支払っているスパチャだろう。
そしてこれまた有名なんだがスパチャの内、三割がユーチューブに企業所属なら残りの半分以上が事務所に持って行かれることになる。聞いた話だとな。
消費税や所得税などの諸々の税金も合わせて考えると100万のスパチャを貰っても手取りは23万くらいになる。
搾取されてるとよく批判されるが宣伝費に2D3Dのモデリング、初期投資、設備に機材の維持費、マネージャーや技術者への給料にコンサートなどへの準備資金と考えると、妥当なとこなんだよな。
でも、こうして稼ぐには大前提としてユーチューブ上のチャンネルで収益化申請が通らなくてはならない。最近は中国のビリビリ動画なんかにもVtuberの進出が始まっているが、基本はユーチューブが活動の舞台となる。ユーチューブで収益化を通るには最低限1000人のチャンネル登録者、年間再生時間が4000時間必要だ。
この上で申請して許可されないと収益化は出来ない。
「で、記念すべき初給料は3万になる見込みか。厳しいな」
細かく値段は変動するんだが、動画の再生数1に付き0.1円が大まかな広告収入だ。つまり全ての動画再生数を合わせると30万回再生される目安ってことだな。
まあ、まだVtuberを始めたばかりの上、スパチャは計算外だけど。生活費を稼ぐどころか初期費用の回収すら出来ない計算になる。
機材なんかを複数購入してるし完全に赤字だ。
「それは仕方ないよ。初期費用は投資として割り切らなきゃ」
「まあね。1年2年と続けていくもんだし」
企業の案件なんかがくれば1件で100万円以上の依頼料は稼げるというから長い目で見るべきなのだ。
でも、問題なのはその1年2年で飽きられないかということだ。
なるほど、Vtuberを諦めて引退する人間が後を絶たないのもわかる。不安定すぎて将来が不安になるな。
トップ層は数百万~数千万を稼ぐことも出来るというが、そんなのは一握りで、しかも企業勢が大半だ。
遊びで続けるにはハードルが高いし、仕事で続けるには不安定。
アイドル業界と同じくVtuberに夢を抱くような人種じゃないと無理だな、こりゃ。
「好きだからやるものだよ、やっぱり。ある程度の収入は欲しいけれど」
嬉しそうに笑うタラコ唇さんはイキイキしている。まだVtuberというものが世間に認知される前から活動していたんだから、そうだよな。
今、トップで活躍してるVtuber達の多くもそうだった。元々は一攫千金を狙えるような状況なんかじゃなかった。
配信が楽しくてVtuberが好きで始めて、ファンが付いてくるようになって、市場が拡大することで結果的に高額の収入を得るようになった。
半分は趣味で始めたようなもんだから今でもVtuberは仕事じゃなくて娯楽として捉えられている。
それほどに楽しそうに見えたのだ。色々な苦労が陰であったことは知っているけれど。
まあ金目的で始めたような銭ゲバVtuberもそれはそれで面白くて好きなんだが。
ぶっちゃけた突飛な発言をするから見ていて飽きない。
「でもVtuberと言えばやっぱりコラボだろ。関係性オタクや百合豚はそれが目当てで見てる節があるし」
「アリス姫とタラコ唇さんの絡みじゃ駄目なんですか?」
「内輪ネタが強すぎるとな。初見が居着かない」
企業勢ならコラボ相手なんて同期や先輩がいるから簡単に出来るんだが、個人勢だとなぁ。
下手に有名Vtuberとコラボすると寄生だとか因縁を付けられて炎上するし。
ブレイブソルジャー以外のリスナーもコラボで呼び込みたいってのは正直あるけどね。
「ツイッターで関わりのあるVtuberさんは? 何人か声をかけてくれてるよ?」
「初コラボの相手は長期間の絡みを期待されたり、新規ファンの獲得に繋がったりするからな。出来れば登録者数の多いVtuberがいい」
「アリス姫、そりゃ寄生って言われても仕方ないっすよ」
うるせぇな。たとえ人気Vtuberだろうと全く新しい分野からの新規ファン獲得はありがたいことなんだしウィンウィンだろ。
どれ、反応のあったVtuberのエゴサーチをしてみるか。
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