二十四話 これを貧困ビジネスという
アリス姫のバックボーンとパーソナリティを説明するのも兼ねて、配信はネトゲのブレイブソルジャー紹介を中心に行った。
初心者でもないプレイヤーのゲーム実況に需要があるのか不安だったが、シリーズとして投稿されたアリス姫のネトゲ冒険記は悪くない再生数を稼ぎ、登録者数も早々に1万人を超えていった。やっぱりアリス姫はまだVtuberというよりもブレイダーであり、姫プレイヤーであるということかもしれないな。
現在の登録者もBSから来ているだろうし、他のゲームや企画に切り替えても付いてきてくれるかは微妙なとこか。
「でも個人勢Vtuberとしてこれは大成功だよ。他の場所でもアリス姫は話題になってきてるし、十分いけると思う」
「ありがとう。それにうちのギルメンも濃いしな。タラコ唇さん以外のギルメンもオモチャにされてる」
特にクリスのホモ人気は高い。俺が美少女だって確定した後はクリスがネカマ需要を満たしている。
本人は嫌そうにしてたけど、アリス姫親衛隊は姫ギルドだからね。団員は女性キャラを所持しなきゃならんのだ。
「あははっ。もう姫ギルドの意味が変わって来ちゃってるね」
「団長、笑い事じゃないですよ。何時の間にか俺とクリスのカップリングまでねつ造されてんですよ」
浩介もといアカリがほっぺたを膨らませる。幼女キャラで四六時中いるせいか仕草が段々と幼女になってきてるな。
肉体は精神に影響を与えるというし、半分くらいはもう幼女として扱っていいかもしれん。
「アカリは一緒に暮らしてるから配信に出しやすいんだよな。ギルドで際立ってるクリスと半レギュラーみたいになってるから、カップリング妄想がし易いんだろう」
「うげ。俺らが男だって皆、知ってますよね?」
「だからなんだ? アリス姫だって元々はネカマだって言ってたよな?」
しかもギルメン達はリンクチートの恩恵で女体化できると知ってるからな。
恋愛的な意味ではマジで障害がないからガチも混ざっているかもしれんぞ。
うーん。合意ならともかくストーカーが生まれるのは困る。やっぱりオフ会の類いは止めた方が無難だろう。
「配信の影響でギルメンに入りたいってブレイダーも増えてるからね。チートのことも考えると悩み所だよ」
「ミーハーな奴らが大量に来てるのか」
チートを覚醒させるのに相応しい人格とか事前にわかりっこないんで、せめて気の合う連中に配りたいんだが。
同一チートのエリンへリヤルを増やしても俺自身の強化には繋がらないし、また何か考えなきゃなぁ。
「あ、そういえば新しく入ったギルメンの中に変なことを言ってログインしなくなった人がいるんだけど」
「チートを渡してないから普通のネトゲプレイヤーだろ、そいつ。単に飽きただけじゃ?」
「そうかもしれないけど、助けてって最後に言ったらしいんだよね。何でも『引き出し屋』に浚われるとか」
引き出し屋……か。それはヤバいな。
ニートの自立支援を謳う営利団体で、本来なら月額20万程度の相場で相談に乗り本人とも長い話し合いをして社会復帰を目指すという職種なんだが。
中には数百万から数千万の暴利で依頼を受け、ニートを無理矢理に拉致して暴力を振るい強制的に人格を矯正してやろうという悪質業者がいるのだ。
お金を残しても何もならない。お子さんの未来を買いましょう。家族の未来を買いましょう。
そんな誘い文句で契約を結んだ後は、まず子供を拉致して親と引き離す。暴力を振るう現場を見られてはならないし、後で難航してるという言い訳で更なる費用請求をすることも出来るからだ。
ろくな職業訓練もせずカウンセリングもせず、機械的に運動させ単純労働をさせ、しまいには真面な飯さえ与えない。
そういう集団生活が何ヶ月も続く。刑務所より酷い。
施設を出た後は一応は就職先に放り込むらしいのだが、アフターケアもないので直ぐに退職する。
それでも就職をさせた実績は残るので業者は自信満々でニートの自立支援を謳う。
親も最初は更生したと喜ぶんだが、後ほど餓死したという知らせが届いた事例が実際にある。これは現実の話だ。
「中にはちゃんとした団体もあるんだが、訴えられて裁判中の詐欺団体みたいな奴もある。ヤクザと大して変わらん」
「うわあぁぁっ。それじゃ新しいギルメンもその矯正施設に?」
「入れられたんだろうな。親の同意付きで」
警察もろくに動かないぞ。何て言ったって被害届けがない所か、契約の同意書があるんだから。
気分が悪いな。
リンクチートを渡してないからチートバレで俺らに被害は来ることはないが、所詮はネットだけの関係だから連絡先も分からないので助けに行くことも出来ない。
俺は会ってすらいない相手だが、もしタラコ唇さんのような親しい相手がそんな目に遭ったと思ったらな。
「チート転生者なんて現実の前には無力、か」
久しぶりに社会の不条理が身に沁みる。
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