異世界ペテン師物語
ステスタ
第一話 異世界召喚
「あのー。ここはどこでしょうか?」
気づいたら見知らぬ場所に俺は来ていた。
床には大きな魔法陣。周りには騎士と思わしき兵隊達。そして、目の前には立派な王冠を被る中年男性。
一瞬で理解した。これは今流行りの異世界転生だと。
「早速だが、そこの者よ『ギイン』と唱えろ」
おっと。
一方的に命令される感じか。
「王が命令しているのだ。早くしろ」
「え、あ。はい。『ギイン』」
王様だと思わしき人物の隣にいた人に急かされるがままにその呪文?を唱えた。
「「「「・・・・・・」」」」
何も起こらなかった。
「王様。どうやらハズレの様です」
ハ、ハズレ?
「うむ。そのようじゃの。仕方あるまい。処分しよう」
処分!
「ちょ、ちょっと待ってください。いきなり処分ってどういう事ですか?」
「「「・・・・」」」
そこ黙るのかよ。
「お父様。流石にひど過ぎます!あの方はこちらの都合で呼び出したのですよ。それなのにハズレだからと言って処分するなんて」
王様の後ろから出てきた少女が問い詰めている。王様をお父様呼びしている事から姫だと言うのが分かるが、なんて良い子なのであろうか。
お姫様。もって言ってやってください。
「わ、分かったから、少し落ち着きなさい。お前がそこまで言うのならこの件はワシが何とかしよう」
「お父様・・・」
お姫様の決死の説得のおかげでどうにか助かる流れになったようだ。
「もう夜も遅い。部屋に戻ってなさい」
「はい。分かりました。お父様」
お姫様が姿を消した後。
「それでは、死んでもらおうか」
「おい!さっきの流れはどこにいった?」
頼む。お姫様帰ってきてくれ。
心の中で頼むも、当然テレパシー的なものがある訳もなくどうしようもならない。
「な、なんで俺は殺されないといけないんだ」
「・・・すまんな。この魔法陣で呼べる異世界人は一人だけ。其方が死ねば、再び召喚することができるようになる。我々には勇者のみが使うことが出来る魔法『ギイン』が必要なのだよ」
・・・なるほど。
どうやら俺はお呼びではなかったようだ。
だが、だからと言って簡単に殺されるのは嫌である。
そこで俺は思いついた。『ギイン』を使えればいいのだと。
「『ギイン』」
手から炎を出した。
ちなみにだがこれは魔法ではない。
種も仕掛けがあるのである。
「勇者しか使えない呪文を使ったぞ」
王様の近くにいた者が驚いていた。
しかしその横にいた、いかにも魔導士と思わしき人物が冷静に言う。
「落ち着いて下さい。こちらの書物の記述では『ギイン』は勇者のみが使える電撃系の呪文です。こいつは嘘をついています」
早速バレてしまった。
けれども魔導士が持つ勇者の呪文が載っているという書物はかなり年季が入っている様に見える。
これならどうとでもいえるだろう。
「王様。失礼ながら進言させていただいてもよろしいでしょうか?」
床に膝をつき、敬意を持って会話をする。
「・・・許す」
「実はわたし炎タイプの勇者でして」
「ほ、炎タイプ?」
「はい。現代の勇者には色々なタイプの勇者がいまして。私の炎タイプの他にも水タイプ、草タイプ・・・様々なタイプがございます」
「そうなのか?」
王様は魔導士に尋ねるが分かるはずもなかった。書物に書かれているのは先代の勇者の事だけであり、異世界(俺が元いた世界)のことまでは載っていなかったのだ。
「なるほどであるか。それでは改めて聞く。勇者よ。名前は何んという?」
俺は数あるうちの初めの名前を使うことにした。
「はい。
異世界ペテン師物語 ステスタ @suteresusta
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