第742話 アヴィドダンジョン・12
「次にフロストゲーターと戦う時は、もう少し考えて戦わないとだな」
あと一体多かったらMPが保たなかった。
色々模索して魔法を余計に使っていたというのもあったけど、一度の戦闘でここまでMPが減ったのは久しぶりだ。
しかも相手がたったの三体で。
「数が多かったら、最初に私の魔法で減らした方がいいかもしれませんね」
クリスの高火力の魔法で殲滅出来ないのは、魔石を回収したいからだからな。
MAPを見る限りフロストゲーターの反応はそれなりの数あるから、多い時はクリスの魔法である程度減らしてから戦った方が良さそうだ。
三階フロアをそれなりに歩く必要があるけど。
その日はフロストゲーターと次に遭遇したらどう動くかを話し合い、一晩休んだ後にとある離島を目指して歩き出した。
その離島は湖に囲まれているが、水が引くと離島に渡れる道が姿を現す。
MAPを見るとその道が出るまでの時間は三七時間となっている。
距離からして十分間に合う。
ただその離島を囲む湖には魔物の反応がある。
反応の状態から今まで戦ってきた魔物ではないようだが、水中にいるため何の魔物かを確認することは出来ていない。
ちなみに離島にいる魔物はポイズンフロッグとシーデビルだと分かっている。
遠見スキルで確認済みだ。
ポイズンフロッグは舌を伸ばして攻撃、拘束してきて、触れると毒に侵される。また表皮にはぬめりけがあって、斬撃が効きにくいとある。
シーデビルは上半身がタコの魔物で、下半身には二本の足があって上半身を支えている。ある意味陸地を自由に移動出来るように進化? した姿なのかもしれない。
そのタコ足には吸盤がついていて、一度捕まると引き離すのが大変という記述が資料にはあった。
他に注意する点は闇魔法を使ってくるということで、その魔法を受けると目が見えなくなるということだ……それってスミ攻撃?
そのことを話しながら離島を囲む湖の際まで来たら、いよいよ水中にいる魔物が姿を現した。
それは資料に載っていない魔物で、鑑定すると種族がエイトとなっていた。
その姿は間違いなくエイそのもので、威嚇の声を上げるとエイトの体は徐々に膨らんでいった。
ペラペラだった体が発酵したパンのように膨らみ……口から水を放出してきた。
その水圧は近くにあった大きな岩にぶつかると粉砕した。
エイトは水を放出すると体が再びペラペラになり、しばらく間を置くと再び体が膨らんでいく。
注意して見ると湖の水を吸収して、その水を吐き出して攻撃しているようだ。
ただの水が吐き出されるだけでこれだけの威力を出すのは、魔力が含まれているからだ。
「く、これじゃ一方的に攻撃されるだけだぞ」
吐き出される水、ブレスを躱しながらアルゴが愚痴る。
今までの魔物は攻撃するために接近してきたが、エイトは湖から一切出てこない。
そのため魔法を使える俺とクリス、遠距離攻撃のスキルがあるヒカリが中心となって攻撃するが、エイトはそれを察すると水の中に逃げてしまう。
「今は退こう。水位が下がればエイトの活動範囲も狭まるかもしれないし、その時に戦った方がいい」
完全に水がなくなることはないと思うが、それでも現状よりは多少よくなっている、はずだ。
というか思いたい。
「最悪、エイトだったか? 奴は無視してもいいかもしれないからな」
ギルフォードが汗を拭いながら言った。
確かに倒すのが難しいようなら、今回は無理に倒す必要はない。
エイトの魔石がなくても、ボスの部屋に入るだけの点数を稼げればいいわけだし。
と前向きに考えることにした。
「それでソラ、島に渡れるようになるまであとどれぐらいだ?」
「九時間だよ」
「なら休もうぜ。島に入ったら忙しくなるかもだしよ」
島はそれなりに広い。
遠見スキルで島を見ると、島は外周部が森で囲まれていて、その森の内側には沼地と池が広がっている。
沼地の方にポイズンフロッグが、池の方にシーデビルが生息している。
互いに生活圏が決まっているのか、それぞれの魔物は互いのいる方に近付くことはないようだ。
「下手に連携されないし、その方が助かるよね」
「そうですね。けど今回の相手はソラやミアに頼ることになるかもしれませんね」
ルリカの呟きに、クリスが相槌を打つ。
毒の回復と、闇魔法対策か。
視界が奪われるってあるけど、リカバリーで回復するのか?
それとももしかして洗浄魔法とか?
黒く染まった体を洗浄魔法で綺麗にする。
想像してみたがありえそうだ。
って、完全に想像がスミ攻撃になっている。
攻撃を受けないに越したことはないけど、万が一に備えて考えておくことは大事だ。
備えあれば患いなしともいうし。
予測しておくと咄嗟な時に迷うことなく行動出来るからな。
それでも予測以上なことが起こると、思考が停止して動くことが出来ないなんてこともあるけど、それはもう仕方ないとしか言えない。
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