第731話 今後の予定
警備隊の詰め所から解放された俺たちは、借家に戻った。
MAPで皆がそっちに戻っていることは分かっていたから。
そのまま一眠りして、お昼を過ぎたあたりで目を覚ました。
既にアルゴは起きていて、食事を摂っていた。
何でもお腹が減って目を覚ましたということだった。
起きた時に、俺たちが眠った後に何があったかをミアが教えてくれた。
「それじゃ軍が森を調べにいったのか」
「うん、冒険者と一緒にね」
どうも俺たちが解放されて、しばらく経ってから出発したみたいだ。
その中には黄金の剣の面々の姿もあったそうだ。
ということはあの軍人たちは休みなくそのまま出発したということか?
そうなることを想定して、町に戻る前に少し休んでいきたいと言ったのか。
そのお陰で町に到着するのが遅れたけど、そうなる可能性を考えての行動なら仕方ないか。
「あとギルドから職員が来て、ギルフォードさんたちがギルドに行っているよ」
ギルフォードにクリフト、ルリカとクリス、セラの五人がギルドに行ったみたいだ。
「何の用なんだろうな?」
碌な事じゃないかもしれない。
少なくともここのギルドに対する評価は最悪だ。
「ま、何にしろ。この騒動を起こした奴がどう動くかだな。町の外に出てくれればそれに越したことはないが、あの待ち伏せも前もって準備していたってだけで、まだ町の中にいる可能性もあるし」
アルゴがため息混じりに言った。
「いや、あの通路から脱出したのは間違いないと思うぞ」
だから俺はそれを否定した。
「そうなのか?」
「待ち伏せしてた複製体のレベルが町の中の奴らよりも高かったから。だから少なくとも前もって準備していた奴らじゃないと思う。ただ相手の顔も分からないし、また町に入られたら意味がないんだけど」
俺は自分の考えをアルゴに伝えた。
問題は秘密の通路を出た奴が、再び町に戻ってくる可能性があることだ。
騒動を起こした奴が何を狙っているのか分からないのもどう動くか読めない原因の一つだ。
この町を滅ぼそうとするなら再度襲撃を掛けてくるだろうけど……。
一応町への出入りは厳重になったけど、完全に防げるかは分からない。
あと外に出たら外に出たらで、今度は交易をする人たちが狙われることになるから、早々に発見する必要はある。
ただ一番の問題は、この複製体を生み出している奴の正体が全く分かっていない点だ。
気配察知や魔力察知でも捉えることが出来ないし、どうすればいいのか全く対策が思い浮かばない。
「秘密の通路を知ってたし、処刑されたって奴の関係者なのかもな」
俺が考えていると、アルゴがポツリと呟いた。
復讐か。
その可能性もあるのか。
ただその関係者にたまたまこんなスキルが目覚めるということがあるのだろうか?
逆に依頼されて別の誰かが実行に移したとして、こんな大それたことに加担するのかも疑問だ。
それに……あの時見た足跡は一人のものしかなかった。
「何を深刻な顔してるか分からないが、考えるだけ無駄だ。そういうのはお偉いさんに任せればいいんだよ。それよりもこれからどうするかを決めた方がいいぞ。って言っても、ここに残るか、町を出るかしか決めることはないだろうけどな」
ダンジョンが利用出来ないなら、ここにいる意味もないか。
「けどここで町を出て、騒動が収まったころに戻ってきてダンジョンを利用出来るのか?」
「その点は問題ないだろ。別にギルドがダンジョンを管理してるわけじゃないしよ」
「でも今はギルドの指示で利用出来ないよな?」
「そこは緊急事態だから、ってのもあるんだろうな。度が過ぎると、冒険者たちも反発して、ヘルクたちのように町を出ようなんて話が出る事態になるわけさ」
その辺りは冒険者ギルドの立ち回りも関係しているとアルゴは言った。
色々と不満が溜まっていたみたいだしな。
ただ黄金の剣の動きも気になる。
ただの善意だけで救援に来たわけじゃないだろうし。
単純にギルドから依頼を受けて報酬のためにきたという可能性もあるんだろうけど。
「正直俺たちは武器も作ってもらえたし、町を出ても問題ないんだ。ま、今町を出るのはちょっと危険だから、俺たちだけで出ようとは思わないけどな」
五人で町を出たはいいけど、そこを複製体に襲撃されたら大変だからな。
アルゴたちなら返り討ちに出来るだろうけど、執拗に狙われて長期戦になると体力的にきついだろうし。
「最悪俺が転移で送ってもいいけどな」
「最終手段として頼むかもしれないな」
そんなことを話していたら、ギルフォードたちが戻ってきた。
「ギルドは何て?」
「……謝罪されたわ」
アルゴの問い掛けにルリカが答えた。
「謝罪?」
「うん。前ゴブリン討伐行って報告した後にさ。確認のため冒険者が調査に派遣されたじゃない。その冒険者が実は調査をしっかりしてなかったことが分かったみたいで、それで謝ってきた」
「よく分かったな」
「帝都で調査にいった冒険者が見つかって、黄金の剣の人たちがその冒険者を連れて今回アヴィドに来た見たいなの」
ルリカたちが聞いた話では、その冒険者は生き残りみたいだ。
町を出て帝都に向かう途中、魔物に襲われてパーティーメンバーの半数は死亡したらしい。
それで帝都に逃げ延びた生き残りは、ギルドから指名手配されていたこともあって黄金の剣が確保して、詳しく追及した結果碌に調査をしていなかったことが判明して、今回その冒険者を連れてきたみたいだ。
「黄金の剣も善意からじゃなくて、打算があって今回連れてきたみたいだけどな」
ギルフォードはそれでもこれで俺たちの名誉は回復するだろうと言った。
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