第707話 変遷・2
これがアイアンゴーレムか。
最初の一撃はすんなりアイアンゴーレムの体を斬り裂いた。
感触としてはストーンゴーレムと変わらない。
何の抵抗もなく剣がアイアンゴーレムの体を走っていった。
これなら楽勝か?
そう思っていられたのは次の攻撃までだった。
二撃目の攻撃を繰り出す前にアイアンゴーレムの体が再生し、斬撃の入りが悪くなった。
さっきは通ったのに表面に小さな傷が残るだけだった。
三撃目になると完全に防がれた。
その理由はすぐに分かった。
魔力による体の強化だ。
なるほど。
アイアンゴーレムの魔石の値段が高いのはこれが理由か。
たぶんこのまま攻撃を続ければ魔力切れによってアイアンゴーレムを倒すことは可能だ。
けど納品としての魔石を手に入れることは出来ない。
良質な鉄を手に入れることが出来るから、そっち狙いの人の方がここには多いのかもしれない。
俺は一度距離を取って仕切りなおそうとした。
けど相手は疲れ知らずのゴーレムだ。
お構いなしに接近して攻撃してくる。
その攻撃を俺は余裕を持って回避する。
このアイアンゴーレムは動きが遅いからそれだけの余裕がある。
ゴーレムは個体によってその体付きが違う。
例えばヒカリたちが戦っているアイアンゴーレムはもっとスリムのため、動きが速かった。
けどこのゴーレムは厚みがあって、大柄のため動きは遅い。腕なんて体を鍛えた冒険者の胴ほどある。
その分パワーがあって一撃が重そうだ。
俺は回避をしながら魔力量を増やしてアイアンゴーレムを斬り付ける。
最初の一撃は深く入るけど、二撃目になると対応されている。
また戦って気付いたのは、動きは遅いけど魔力の展開は早い。
さらに敵ながら魔力の扱いが上手い。
いや、ゴーレムにしておくのが勿体なく思うほどの魔力操作だ。
これは一対一だと辛い。
そう、一対一だと。
俺は強化スキルを使い剣の強度と切れ味を上げる。
それで攻撃すれば深くゴーレムの体を斬り裂いた。
と、同時に再生が始まる。
ゴーレムは再生しながら殴打しようと腕を振り回すが、俺はそれを回避して二撃目を放つ。
俺の剣の軌道に合わせて魔力が集まる。
俺の斬撃はその魔力で強化された体に弾かれ、背後から突き出された槍がアイアンゴーレムの身体を貫いた。
その突きは一撃で終わらず二撃三撃と繰り返されて、体に穴が開く。
円を描くように繰り返された突きが終わり、最後の一撃が入るとまるで型抜きでもしたようにゴーレムの体の一部が押し出された。
地面にそれが転げ落ちると同時に、ゴーレムの身体がゆっくり倒れてきた。
俺は落ちたそれを素早く拾うと背後に飛んで倒れてきたゴーレムを躱した。
「どうだった?」
「助かったよ」
倒れたゴーレムの向こう側にいたのはミアで、額に浮かんだ汗を左手で拭っていた。
その反対の手に握られているのはミア愛用の槍だ。
「主、これ」
俺がアイアンゴーレムの残骸を回収していると、ヒカリが彼女たちが狩ったアイアンゴーレムの魔石を渡してきた。
それを受け取るとさらに残骸も渡してきた。
鉄としての質は今倒したものに劣るけど、それでも鉄は鉄だ。溶かせば色々な用途に使える。
俺たちの近くにいたゴーレムは倒し終わったが、戦闘はまだ継続中だ。
「ルリカたちは……大丈夫そうだな」
三人は連携して余裕を持って戦っているように見える。
「アルゴさんたちの方に行きましょう」
ミアが槍を握り締めて言った。
アルゴたちの方が人数も少ないし、相手にしているゴーレムも多いから援護に向かうことにする。
ヒカリとミアはアルゴ、ギルフォード組の援護に向かい、俺はリックたちの下に駆け付ける。
俺は到着と同時に三人にヒールを使い、三人の邪魔にならないように援護をしようとして、特にやることがないことに気付いた。
なんか下手に手を出すと邪魔になるからとその戦い方を見て思ったからだ。
息の合った連携に、守り、崩し、攻撃と三位一体といった感じで戦っている。
魔法でアイアンゴーレムの動きを阻害することは出来るけど、それでタイミングがずれてしまいそうで怖い。
たぶんその程度の誤差、リックたちならすぐに修正して立ち回るだろうけど、ここは周囲を警戒して邪魔をしないようにした。
実際戦闘は俺が駆け付けてから五分もしないで終了した。
結局ただ三人の動きを見ているだけに終わったけど、それはそれで勉強になった。
記憶スキルのお陰で戦闘の光景は覚えているから、時間がある時にイメージトレーニングでもしようかな?
リックたちの戦闘が終わる頃にはルリカたちも合流し、アルゴたちの戦いが終わるのを待った。
アルゴたちはヒカリとミアに経験を積ませるためか、二人をメインに据えてブロンズゴーレムと戦っている。
危なげない戦いはそれから程なくして終わり、俺たちの周囲に沸いたゴーレムを一掃することが出来た。
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