第692話 アヴィドダンジョン・2
何をしているかと言えば見ての通りご飯を食べている。
「いや、それは見れば分かるが……お主ら、ここはダンジョンじゃぞ?」
クリスたちは困った表情を浮かべているけど、ヒカリはそれが何か? みたいな感じで首を傾げて肉を齧る。
「疲れた体にはしっかりした食事は大事だからかな?」
無難な回答をしたらヘルクだけでなく、その後ろにいる人たちも困惑している。
あれ? ここのダンジョンを利用している人たちって料理しないのが普通なのか?
「いや、おるぞ? おるが……」
ヘルクの目が広げられた料理に目を向ける。
俺もそれに習って料理に視線を落とす。
パンに肉串とサイコロステーキの二種の肉料理。野菜スープにカットフルーツ。うん、いつもとそんなに変わらないメニューだ。
「普通ここまで豪華じゃないぞ?」
ヘルクの言葉に後ろの面々も同意を示すように頷く。
「おじい、食事は活力の源。しっかり食べないと働けない」
ヒカリの言葉に苦笑が漏れている。
「ま、まあ、俺たちはいつもこんな感じだから気にしないでもらいたい。それよりもヘルクも採掘か? 確か一度行った階なら飛べるんだよな? 何で一階に?」
「今日は新人の引率じゃ」
順番で新人に採掘の仕方を教えているそうだ。
しかも技術を盗め! ではなくて親切丁寧に、手取り足取りらしい。
獣王国のフクスト村でドワーフのダルクに会ってなかったらきっと驚いていたに違いない。
ダルクも結構面倒見が良かったからな。
……村の人限定だけど。
あれは力量に合わせてそう接していたみたいな感じでもあったけど。
「……変遷後は魔物の湧きはゆるやかになるが、全く出ないわけじゃないから気をつけるんじゃぞ」
最終的にその一言を残してヘルクたちは出発していった。
ちなみにわざわざ俺たちの方に来たのは、匂いに誘われてだった。
食事が終わったら再び採掘を開始した。
ハンマーを打ち下ろす音がリズミカルに鳴る。
交代で作業をしているが、今ハンマーを振るっているのは俺だけだ。
ヒカリは単純作業で眠くなったようでお休み中。
ミアもさっきまでは叩いていたけど、腕が痛くなってきたから休憩に入った。
「これなら魔物と戦っていた方が楽だったかも」
「あー、それは分かる」
ミアとルリカの会話が聞こえてくる。
クリスやセラもそれに応じて声を発している。
俺はそれをBGM代わりに聞きながらハンマーを振るう。
あ、叩く感触が変わった。
手に強い反発を覚えた。
鑑定でハンマーの耐久値を確認して振るったら、一回叩いただけで耐久値がごっそり減った。
俺はそこで強化スキルを使ってハンマーを強化する。
うん、これなら問題なく掘れる。耐久値も減っていない。
地層によって硬さが異なるから、単純作業でありながら奥が深い。
場所によって使う道具も交換しないと、道具の耐久値が瞬く間に減って壊れる。
俺の場合はそれをスキルで補助出来るから比較的作業が楽だ。
今のところハンマー一つで事足りる。
「ソラ、そろそろ終わりにしませんか?」
一心不乱にハンマーを振るっていたら、クリスが声を掛けてきた。
もうそんな時間か。
「それでソラ、どうするのさ。泊る? それとも地上に戻るさ?」
ここのダンジョンの特徴として、掘って奥に進めば進むほど貴重な鉱石が手に入る可能性は高い。
実際今日の採掘でも、最初よりも後半に入手した物の方が貴重な鉱石が多かった。
そのため利用者の多くはその場で宿泊して、翌日続きを掘っていく。
その場を離れて誰もいないと、他の利用者に場所を取られてしまうからだ。
実際それを狙う輩も一定数いる。
時々MAPを確認したけど、様子を見にきていたのか近付く反応があった。
クランや大人数パーティーなら交代すればいいけど、俺たちみたいな少人数だとそうはいかない。
それを埋めるためギルド内では共同作業の募集もあるし、場所を取って置いてほしいという依頼をもあった。
あとはある程度掘り進めた場所の売買も行われたりする。
ただ注意が必要なのは、奥にいけば貴重な鉱石が入手出来る確率は増えるが、必ず入手出来るとは限らない。
そのためその辺りはかなりの博打になる。
俺は目の前の壁を鑑定した。
まだまだ鉱石は採れそうだが……。
「今日は泊り、でいいか? 明日は疲労具合でどうするか決めるって感じで。というか、明日は俺一人で作業してもいいぞ?」
やはり採掘には向き不向きがある。
「その辺りは明日また皆で話し合えばいいんじゃない?」
それは確かにそうか。
結構クリスとセラは楽しそうに採掘していたからな。意外なことに。
結局その日はその場で夕食を済ませて、交代で見張りをして休むことになった。
MAPを見ているとやはり交代する人もいるし、俺たちのように交代するわけでもなくその場に留まる人たちもいるようだった。
あ、ヘルクたちも交代なしで留まるみたいだ。
新人の研修をするって話だったし、慣れさせるためにわざとそうしているのかな?
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