第631話 説明
「ギルフォードさん、おかえりなさい」
「ああ女将。こいつらが先日言っていた同業者だ」
「この方たちが?」
俺たちを見た女将は驚いている。
ギルフォードに案内された宿はダンジョンから近い場所にある宿だった。
現在宿の中に入って来たのは、ギルフォードに俺、ヒカリとミアの四人で、クリスたちは外で馬車の様子を見ている。
「見た目で判断しちゃ駄目だぜ。こう見えても俺たちよりも腕利きだから」
「本当ですか?」
ギルフォードの言葉に女将は目を大きく見開いている。
「ああ、こいつら既に他のダンジョンを二つ攻略しているから」
そんなことを言う必要があるのかとギルフォードを見ると、
「帝国は実力主義だからな。その方が侮られない」
と耳打ちしてきた。
「! そ、それは凄いですね。それでは手続きをさせていただきますが、確か七人と伺っていましたが、あとの四人は外ですか?」
「外に四人いるが、一人は別行動をするらしい。だから実際に泊まるのはこいつらを含めて六人だ。あと馬車の方も預かってもらいたい」
「かしこまりました。すぐに手配いたします」
ギルフォードにはカイナは今回のダンジョン攻略では巨人の村にいてもらうことを伝えてある。
コアに戻してもいいけど、せっかくなら巨人たちと過ごす時間を作ってあげたい。
その後馬車を宿の人に任せて部屋に案内してもらった。
料金は高かったけど、室内を見て納得した。風呂も広くてゆっくり出来そうだ。
「とりあえずアルゴたちを呼んでくる」
ギルフォードが部屋を出ると、俺は一先ず転移用の魔道具を作成して、カイナを連れて巨人の村に飛んだ。
そして事情を話してカイナと別れて再び宿に戻った。
その際転移用の魔道具は一度破壊した。
魔道具は作るごとにMPの最大値が減るから、不必要な場所のものは破棄している。
俺が戻ってきたタイミングでノックの音がした。
ドアを開けるとそこにはアルゴたちメンバーが揃っていた。
部屋に招き入れると互いに挨拶を交わし、早速ダンジョンについての説明が始まった。
ズィリャにあるダンジョンは、全一〇階で構成されている。
他の多くのダンジョンと同じように先の階層に進むごとにフロアは広くなり、また出る魔物も強くなっていく。
ダンジョンはマジョリカと同じ迷宮型だが、一つ大きく異なる点がある。
「ここのダンジョンは階段を下りるとすぐ目の前に次の階へ行く階段があるんだ」
「それって先に進み放題ということか?」
そういえばギルドに行く前に見た地図には、階段の場所が記されていなかった。
「そこが面倒なところでよ。まず各階の入り口に台座があって、そこの台座でパーティー申請を行う。で、次の階に行くのに必要な数の魔物を狩る必要があるんだ」
アルゴの話では、例えば一階から二階に行くなら、一階に出る魔物を一〇体狩る必要があるということだ。
この一〇体はパーティー登録した誰が狩ってもいいそうだ。
「だから魔物を見つけて狩ることが出来さえすれば、すぐにでも次の階に進むことが出来る」
そう言ったアルゴは、浮かない顔でため息を吐いた。
ギルフォードたちも同じような反応だ。
その理由は、討伐数で次の階へ進めるため魔物の取り合いが起こっているからみたいだ。
「それってダンジョンに入るごとに討伐し直さないといけないのか?」
「いや、一度先に進んだら次はその階から挑戦出来る。取り合いが起こっているのは、その階のボス部屋に入るためには、もう一度魔物を必要数狩らないといけないからだ」
ズィリャダンジョンのボス部屋は、マジョリカのボス部屋と同じように宝箱がドロップされて、レアが出る確率も高いそうだ。
そのためボス部屋を周回する冒険者たちがいて、特に浅い階層では討伐数も少なくボスも倒しやすいため挑戦権を得ようとする者が多いと言う。
魔物の取り合いが起こっているというのはそういう理由からだ。
「しかも俺たちが到着してから二階ほどダンジョンにいったが、魔物を倒さずに捕獲して、それを売ろうとする輩もいた。一応ギルドには伝えたが、特に決まりがないみたいでな。しかもそれを冒険者個人じゃなくてクランでやっているところもあるみたいなんだ。俺たちが以前ここのダンジョンを利用していた時は、そんなことやる輩はいなかったんだけどな」
しかもダンジョンが魔物を生み出すのは、一定数まで減った時なので、捕縛した状態で放置されると新たに魔物が出現しないそうだ。
と、アルゴがため息交じりに言った。
「それって魔物を狩りたければお金を払えってことなの?」
「ああ、ルリカの言う通りだ。それが嫌なら、入り口から離れた奥の方へ探しに行けってことだ。ただ奴らが何処まで手を広げているかは実際に奥の方まで行かないと俺たちにも分からないんだ」
結構面倒だが、MAPが機能すれば魔物を探すことは十分可能か?
ちなみに魔物一体当たりの値段を聞いたら高くはないが、魔物を狩って魔石や素材を売っても利益はほぼ出ない。
いや、これが一〇体となると結構なマイナスになるのか?
一階はゴブリン系の魔物だから、売れる素材はほぼない。
ゴブリン系といったのは、一階から上位種が普通に出るからで、階段近くには基本ただのゴブリンが出て、上位種は離れるほど遭遇しやすくなるみたいだ。
なおただのゴブリンを狩ろうが、上位種を狩ろうが、一体は一体とカウントされるみたいだ。
「そんなことをしないで真面目に狩りした方が稼げるとは思うんだけどな」
「それはそうなんだろうけどな」
売れるまで捕縛続けるのも普通に大変だと思う。
それとも商売が成り立つほどかなり売れるのだろうか?
俺の言葉にアルゴも呆れ顔で答えた。
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