第62話 魔力講座・2

「な、なんなんですの。なんなんですの」


 説明するほどのことはないんだよな。


「これがミスリルの剣に魔力を流した結果だ。強度と切れ味が増す感じだな」


 丁寧? に説明したが皆興奮して聞いてませんよね?

 床に落ちた金属の表面を調べたり、レイラの剣の状態を確認したりして忙しい。


「主、凄い」


 ヒカリだけが絶賛してくれる。少し誇らしげに胸を張って。

 俺は興奮が収まるまでヒカリの頭をナデナデ。このままだとヒカリが蕩けてしまいそうだ。早く収まらないかな。

 しばらく待ったが駄目だったので現実に引き戻した。


「分かってくれたと思うが、これが魔力を流すことで付与される威力なんだが、注意点もいくつかある」


 しっかり聞いておけよ? テストには出ないけどな。命にはかかわるが。


「まず一つ。これは魔力の伝導率……流しやすいものではないと大変だということ。普通の剣でも出来なくはないけど魔力が大量に必要になる。その点ミスリルで作られた剣は魔力が通しやすい」


 皆さん真剣な顔で聞いていますね。


「それで二つ目。こっちの方が重要かな。魔力を流す時に、自分の限界以上の魔力を流すと、意識を失って倒れる。レイラは見ていたと思うが、無防備になる。これは減っていくと気怠くなるから一応分かると思う」

「魔力酔いでしょうか? 魔法を限界以上に使うと意識が混濁することがあるのですが、魔法使いの間ではそう呼ばれています」

「魔力酔いか……多分それだな」


 確かにそんな感じかな? 酒を飲んだことないから酔ったことないんだが。

 ミスリルの剣を持っている三人は、特に真剣に聞いている。レイラは実際にその切れ味をロードの時に目の当たりにしているからか、その有用性を良く理解してそうだ。


「もしかしたらミスリルの剣や短剣に魔力を流す練習をした方が、魔力を感じやすくて分かりやすいかもな」


 感じるのは無理かな? けど魔力を流せたかどうかは分かるかもしれない。

 何か練習で使えそうな道具があればいいんだけどな。錬金術で作れるかまた調べておくか。

 俺はまた分からないことがあったら聞いてくれということで部屋を後にした。

 部屋に充満する女性の匂いに頭がくらくらしてきたとも言う。ふう、理性を保つのは大変だ。正確には慣れてないから変に緊張する。

 俺は宿屋の最上階にある見張り台に移動して村の状態を確認した。

 原型を留めている建物を探す方が簡単なほど、朽ち果てている。テレビで見たハリケーンの通った後の映像を思い出す。

 人の数も減ったこの村はこの後どうなるんだろう。

 MAP表示をさせて気配察知を使う。

 オークはもう洞窟に到着している。到着してから二日目になるが動きがない。

 街道の方を見ると、MAPの端に移動する集団が見える。順調に進んでも四日かかる距離か。オークの活動再開が早いか、馬車の到着が早いか。オークが村を目指せば一日で来られるからな。警戒だけはしっかりしておかないと。


「ステータスオープン」


名前「藤宮そら」 職業「魔導士」 種族「異世界人」 レベルなし


HP550/550 MP550/550(+200) SP550/550


筋力…540(+0)    体力…540(+0)  素早…540(+0)

魔力…540(+200)  器用…540(+0)  幸運…540(+0)


スキル「ウォーキングLv55」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1習得)」

経験値カウンター 29/55000


スキルポイント 7


習得スキル

「鑑定LvMAX」「人物鑑定Lv5」「鑑定阻害Lv5」「並列思考Lv7」


「ソードマスターLv7」「身体強化Lv8」「気配察知LvMAX」「魔力察知Lv5」

「自然回復向上Lv8」「状態異常耐性Lv5」「気配遮断Lv6」「暗視Lv3」

投擲とうてき・射撃Lv5」


「魔力操作Lv9」「生活魔法Lv8」「火魔法Lv5」「水魔法Lv3」「風魔法Lv3」

「土魔法Lv4」「光魔法Lv4」「空間魔法Lv8」「神聖魔法Lv5」「錬金術Lv9」


「料理Lv7」


NEW

「痛覚軽減Lv1」「闇魔法Lv1」


 痛覚軽減は感じる痛みを緩和してくれるもの。オークロードの打撃の痛みで集中力が切れそうになったので、それ対策にとった。ただこのスキルの懸念しているのは、レベルが上がった時に痛みの軽減がどこまでされるか。致命傷に近いダメージを負っても痛覚軽減のせいで気付かなかったなんてあったらゾッとする。ここは注意しておかないと駄目かもしれない。

 闇魔法は闇魔法が使えるようになる。属性魔法をコンプリートしたいがために覚えました……後悔はしていない。攻撃系の魔法よりも補助系の魔法が多いのが特徴か。


 既にスキルが魔法よりだな。魔法使いを名乗っていいのだろうか? と思ったが、魔法のレベルがまだまだ低い。戦うと魔法使いなのに物理攻撃メインとかだしな。

 ひとまず錬金術でお目当ての魔道具が作れるか試すか。

 造りたいものをイメージすると頭に浮かぶのはまさにチートだと思うが、上手くイメージしないと全く別物が浮かぶから地道な作業なんだよな。

 魔力を視覚的に捉えられるのが理想だな。俺は魔力察知があるから流れを追うことが出来たが、普通の人は出来ない。言葉や図解で説明したが、伝わったかは微妙だしな。ミスリルを使って魔力を流すにしても、確認の方法が切れ味で、だと危ない。

 ん? これなんていいか。魔石の魔力を抜くと、魔石の色が消えて透明になる。そこに魔力を流すと透明から何色かに染まっていく。色は得意な属性によって変わる、と。材料は魔石だけか。オークの魔石を使わせて貰うか。

 俺はレイラにオークの魔石を使わせてもらうため、相談することにした。一緒に討伐したから、勝手に使うわけにはいかないからな。

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