　時間旅行をするのならば、どこを訪れたいか？

　私がのぞいてみたいのは、1180年もしくは1567年の東大寺である。

　このふたつの年、平重衡と松永久秀の手によって、東大寺は焼き討ちにあった。大仏も被害を受けた。

　そう、私は、大きな声では言えないのだが、大仏の焼けるところが見てみたいのである。あの、私には、威圧的な、権力の傲慢さの象徴に見える大仏の焼けるところが。

　私の中で大仏のイメージは、手塚治虫の「火の鳥鳳凰編」のそれである。

　だからと言って、金閣寺よろしく、私がいまから火をつけたいというわけでは決してない。私みたいな変わり者ではない、世の九割九分の人のために、これからも末永く、大仏には残っていってほしいと思っている。

　そもそもの話をしてしまえば、私は仏像全般が怖い。なぜなのだろうかとたまに考えるのだが、なぜ怖いのかはわからない。おそらく、その原因不明さが、私の仏像に対する恐怖心を助長しているのだろう。

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