『エージェントは異世界で躍動する!』
琥珀 大和
エージェント、異世界へ
今、自分が置かれている状況から長い時間···と思われるが、思考がフリーズ状態にあったようだ。
俺は職業柄、普段から冷静沈着で余程の事が起こらない限り焦ったりはしない。
こんな思考停止状態に陥るなんて、中学校の期末試験中に猛烈な腹痛が襲い、席を立つのが恥ずかしくて、教室では出してはいけないモノを漏らしてしまった時以来だろう···幸か不幸か、あの黒歴史が今の俺の存在を作り上げることになったのだから、人生とはわからないものだ。
···いや、話を戻そう。
そりゃあ、いきなり大自然、しかも見たこともない草木が生い茂る山間の景色が突如として現れたら誰でもこうなるわな。
何度も腹式呼吸で気を静めて、心の中で叫んでみた。まぁ、状況は何も変わらないのだが···。
冷静に分析をしてみよう。
思い当たるのは奴だ。
組織のお抱え科学者である奴が、瀕死の重傷を負った俺を、最新機器が揃う治療施設で変なドックに放り込んでコントロールパネルを起動させた。
嫌な笑みを浮かべていた奴の顔に不安しか感じなかったが、何せ任務中の負傷で死にかけていた俺に選択の余地はなかった。
いや、周囲にいた助手達が止めようとしていた気もするが···奴は狂気じみた顔で、「さあ、私の素晴らしい発明で、超速回復をしてやろう!」とか叫んでいた。
予想通りと言うか、何と言うか···起動したドックは数分後に爆発をして、気がつくと···俺はここにいた。
マッドサイエンティストめ、さっさと息の根を止めておくべきだった。
不思議なことに、あれだけの重傷を負っていた体は完全回復をしている。
回復の副作用で転移でもするのだろうか。奴ならそんな技術を開発できても不思議ではない。頭が良すぎて、ネジが全部外れているような存在だしな。
まあ、いい。
それよりもここはどこだ?頬を撫でる風や、深い森の匂いから夢ではないことはわかる。俺は現実主義者だ。まずはここがどこなのかを把握しなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます