ジュジュ対バネッサ
ジュジュは、ボナパルト公爵邸に与えられた私室で目を覚ました。
目を覚ますと、侍女たちがゾロゾロと入ってきてはジュジュの着替えを手伝う。
髪を洗い、化粧をし、ドレスを着せ、アクセサリーを……。
「あ、アクセサリーはそんなに派手にしないで。あと、コルセット緩めにお願い」
ジュジュは、腰をぐりぐり捻り大きく伸びをする。
今日は大事な一戦。腰がきついままでは集中できない。それに、ちゃらちゃらしたアクセサリーもあまり好きではないので、ネックレスと髪留めだけにした。
支度が終わり、運ばれてきた朝食を一気に食べる。
「───っし! 気合入ったわ」
今日は、バネッサとの対決。
やれることはすべてやった。
ジュジュは、集中するため迎えが来るまで一人でいることにする。ちなみに、カーディウスはジュジュとの接触を避けるため、王城に泊まった。
カーディウス、アーヴァイン、ゼロワンの三人は、今日の対決の審査員だ。
『なーにしてんだ?』
「集中してるの……って、ロキ? あなた、なんで」
すると、いつの間にか妖精のロキがふわふわ浮かんでいた。
ジュジュの目の前で大きく欠伸をする。
『ふわ~あ……眠い。また人間界で寝たら王様に怒られちゃうぜ』
「あなたね……ああ、王様は元気?」
『元気もなにも、いつも通りさ。それより、何か面白いことやんのか?』
「まぁね。面白いかはともかく、負けられない女の勝負があるのよ」
『ふーん……よくわかんねーけど、がんばれよ』
「うん。ありがとう、ロキ」
ロキと喋り、浮ついた気分が少し落ち着いた。
すると、ロキはジュジュの眼の前へ。
『勝負って、鑑定か?』
「そうだけど」
『じゃ、お前の勝ちじゃん。お前の眼、おれとおんなじ目だし、万物全てを見通せる妖精の眼だ』
「あのねー……あたしの眼、王様に何かされたみたいだけど、何も変わらないわよ?」
以前、妖精の王に何かをされたが、ジュジュの眼に変化はない。
すると、ロキがジュジュの眉に触れた。
『そんなことないぞ? 力は安定してるし、もう鑑定できない物はないと思う。集中すれば何でも鑑定できるようになったはずだ』
「噓?……んー」
ジュジュは、試しに部屋にあったカーテンをモノクルで見た。
◇◇◇◇◇◇
〇シルクカーテン
高級品。
シルクダイヤモンドブランドの高級カーテン。
一枚ダイヤモンド七個分。
◇◇◇◇◇◇
「あ、できた……って、このカーテンダイヤモンド七個分!?」
宝石ならともかく、高級品はまだ鑑定できない。でも、このカーテンは鑑定できたようだ。
驚くジュジュに、ロキは言う。
『妖精の眼はなんでもお見通しだぜ。その気になれば物の寿命だって見える』
「う……それは見たくない」
寿命鑑定。それは、禁忌だ。
アーヴァイン、カーディウス、ゼロワンですらできない。過去の王族で寿命鑑定をできる人物がいたとジュジュは聞いたことがある。もしかしたら、妖精の眼を持つ初代国王だったかもしれない。そう思った。
ジュジュは、モノクルをそっと撫でつける。
「あたし、この勝負が終わったら……アーヴァインに告白するんだ」
『アーヴァイン、って……あの黒髪の怖いやつ?』
「うん。勝っても負けても、想いは伝えたい」
『ふーん』
「そして、勉強してい鑑定医になって……えへへ」
ジュジュは笑った。
これから先の未来。考えるだけでたのしい。
でも、その前に……バネッサとの決着は付けなければならない。
ジュジュは、自分の頬をパシンとはたく。
「よし! ジュジュ、行きます!」
『どこへ?』
「真剣勝負に決まってるでしょ!」
ジュジュは拳を掲げ、ロキに向かって力強く微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇
王城から迎えが到着。
ジュジュは馬車に乗り込み、王城へ。
アーヴァインの婚約者を決めるための戦いだ。
こんなことをしなくても、ジュジュの家を傷付けた証拠を出せば、バネッサは婚約者候補から外せる。でも、ジュジュはそれを望まなかった。
家を傷付けたことは許せない。
でも、それ以上に、女としてバネッサに挑まれた勝負から逃げたくなかった。
だからこそジュジュは、鑑定勝負を受けた。
王城に到着し、案内されたのは宝物庫。
宝物庫には、三人の男性と国王。他にも大勢の鑑定士がいた。
「ほっほ。来たか、鑑定士ジュジュ」
「国王陛下。ごきげんよう」
「うむ。今日はいい勝負を見せてもらうぞ」
国王陛下は、この状況を完全に楽しんでいた。
ジュジュは曖昧に微笑み、アーヴァインたちを見る。
「…………」
「ふふ」
「…………はぁ」
アーヴァインは黙って頷き、カーディウスは笑って手を振り、ゼロワンはため息を吐いてそっぽ向いた。各々の反応に、ジュジュは静かに一礼。
すると、すでに到着していたバネッサが来た。
「ごきげんよう、鑑定士ジュジュ」
「ごきげんよう、鑑定士バネッサ」
鑑定士同士は、名前を呼ぶときに鑑定士~と呼ぶ。
今日は鑑定士同士。令嬢同士ではない。
「負けませんわよ」
「私だって。見てなさい……」
「ふふ、野獣のような目ね……ああ怖い」
バネッサは、持っていた扇子で口元を隠す。
ジュジュはフンと鼻を鳴らし、バネッサと距離を取った。
鑑定勝負は、もう間もなく始まる。
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