数学となのはな

谷口みちか

なのはな

 春の香り。午前11時前の日差しは暖かく俺の閉塞感を少しだけ和らいでくれている。そしてクスノキの下の腐葉土の下には小さな生命が芽吹いている。俺は退屈な3時限目の数学の授業を抜け出して、学校の中庭のクスノキの下に設置されたベンチに座っていた。

「あー。退屈だ」

 俺は花壇の方へ歩いていった。

 

 その小さな花壇には、黄色い菜の花が一面に咲いていた。

「こんなとこで何してるの?」

菜の花の一つが俺に話しかけてきた。

「微分がよくわからなくてさ。嫌になって抜け出してきたのさ」

菜の花が揺らめく。

「おさぼりさんね」

「今日はぽかぽか陽気で、気持ちいいな」

 菜の花は揺らめく

「そうね。でも雨の日もなきゃ私達は枯れてしまうわ」

 俺はちょっと微笑み、花びらの一つにふれた。

「水を持ってくる。のどが渇いたろ」 

 菜の花は揺らめく


 俺は花壇の隅に置かれている青いジョウロに水を注いで、

 花壇にすこしずつ水をやった。


 菜の花は風に吹かれてさらさらとゆれた。

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数学となのはな 谷口みちか @mitika-T

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