107

 お側ご用人の2人は小銃を乱射。

「くそーっ!」

 開け放たれた扉でも近衛兵たちが小銃を乱射。樹々に隠れてる間者たちは身動きが取れなくなりました。悔しがるリーダー格の間者。

「くそーっ、ここまで来たっていうのに、何もできねぇ・・・」


 舟が扉の前に着き、すぐに梯子が降ろされ、上にいた近衛兵の1人が半分くらい下り、手を伸ばしました。

「さあ、姫!」

 姫はその手を見ますが、動こうとしません。侍従長はそれを見て、

「姫、早く!」

 姫はコマンダーの顔を見上げます。コマンダーは姫を見て微笑みます。

「姫、自分は大丈夫です。さあ、上がってください!」

 姫は申し訳なさそうにぽつり。

「ご、ごめんなさい・・・」

 姫は差し伸べられた近衛兵の手を握ります。そして梯子を上り始めました。間者の1人はそれを見て、

「チャンス!」

 その間者が樹の幹から飛び出し、矢をつがえた弓を構えます。

「もらった!」

「させるか!」

 侍女が舟の上で小銃を連射。その間者はあっという間に蜂の巣になってしまいました。

「うぐぁーっ!」

 リーダー格の間者は、転がったその間者の身体(死体)を見て、

「ばかやろ・・・」

 梯子を上る姫。と、途中で振り返りました。十数本の矢が刺さったまま、大の字で踏ん張ってるコマンダー。姫は再び愕然。

「ああ・・・」

 コマンダーは横目で姫を見て、ぽつり。

「姫、なんとしても生き延びてくださいよ・・・」

 姫は何か返答しようと思いましたが、いい言葉が思い浮かびません。姫の手を取ってる近衛兵は、無理やり姫の身体を引っ張り上げます。

「姫、早く!」

 姫は仕方なく梯子を上ります。次の瞬間姫の背後からドカッ!という大きな音が。けど、姫は振り返ることができませんでした。ただ、唇を噛むだけ。

 姫に続いてお側ご用人の2人と船頭役の近衛兵も梯子を上がりした。侍従長は観音開きの扉の片方のドアノブを持って、3人を誘導。

「さあ、早く!」

 3人は扉を通り過ぎました。侍従長はさっそく両側のドアノブを握って扉を閉めようとします。が、瞬間コマンダーの方を見ました。

「すまなかった・・・」

 バタン! 扉が閉まりました。


 ここは宮殿内の廊下。廊下のどん突きには姫、侍従長、2人の侍女、10人ほどの黒服姿の近衛兵がいます。側には小さな観音開きの扉があります。たった今閉ざされた扉です。

 侍従長はぽつり。

「くー・・・ やはり最後にもう1回兵を巡回させておくべきだった・・・」

 一方姫は顔面蒼白状態になってました。自分と関係の深い人がまた眼の前で殺されてしまった。今回は将軍のときと違って姫自身に落ち度はなかったのですが、ショックは計り知れません。もうこれ以上配下の者が死ぬのは嫌だ。こうなったら・・・

 姫は侍従長を見て、

「じぃ、お願い。私の飛行魔法を元に戻して!」

 しかし、侍従長は姫の期待に応える気はないようです。

「できません!」

 姫はむっとしました。

「なんで? なんでよ!? このままじゃ、みんな死んじゃうよ! 私が箒に乗って逃げれば、それで済むことじゃん!

 私、約束するよ! あの要塞には絶対突っ込まない! 準一の仇なんか一切考えないから!」

 侍従長は怒鳴ります。

「ダメと言ったらダメです!」

 姫は唖然。

「な、なんでよ・・・」

 と、姫は何か思いついたようです。姫は懐に右手を入れ、すぐにその手を抜きました。するとその手には軍用拳銃が逃げられてました。それを見てお側ご用人の2人と近衛兵たちはびっくり。

「ひ、姫!?」

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