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 準一は気分転換にちょっと質問してみることにしました。

「この国じゃ、13歳になるまでセックスしちゃいけないんですか?」

「うん、そうよ。これは55年前にできた法律。当時風俗嬢の低年齢化が問題になってて、ついに4歳の娼婦が現れたらしいの。それを聞いた当時の女王様が激怒して、いっさいの私娼を廃止して、娼館をすべて国営にしたそうよ。

 これを機に娼婦は、13歳からとなったみたい。13歳未満はセックスしてはいけないって法律も、そのときできたと聞いてます」

 準一の世界の基準では、13歳から身体を売ってもいいという法律は異常ですが、ま、国が変わればモラルも変わります。これは素直に受け止めないといけないのかもしれません。

 準一は再び質問しました。

「君も13歳から働いてるの?」

「もちろん。たぶんさっき会った28人全員が13歳から働いてると思いますよ。貧民街で生まれ育った女の子の大半は、家族のためにここで働かざるを得ないんですよ」

「大変なんだな」

「でも、今の制度を作った女王様のお蔭で、みんな、生活がう~んと楽になりました。

 今は娼館の取り分は2割、私たちは8割もらえるけど、以前はまったくもらえなかったみたい。娼婦になるとき、二束三文の契約金を親に渡しただけだったと聞いてます。

 それだけじゃありません。あなたの世界にも学校てあるんですか?」

「もちろん」

「ふふ、このノルン王国にもあるんですよ。ノルン王国の学校は、7歳を迎える年の1月から12歳になった年の12月までとなってます。あなたの世界でも親の都合で学校に行けない子っているんですか?」

「いや~ 絶対行かせないと、親が逮捕されちゃいますよ!」

「あは、そうなんだ。ノルン王国では行くか行かせないかは親の自由なんです。そのせいか、男の子の8割は学校に行ってたけど、女の子は1割も行ってなかったみたい。特に貧民街で生まれた女の子は、1人も学校に行ってなかったそうです。

 公娼のルールを作った女王様は、そこんところも根本的に変えたんですよ。学校に通ってなかった女の子は、娼婦になることができないてルールを作ったんですよ。そのせいで貧民街の女の子はみんな学校に通うようになったと聞いてます。それが証拠に、識字率は大幅に上がったそうです」

「へ~ いい女王様だったんだ。

 でも、その女王様て、国を守るために3人の娘を道連れに飛び降りたんでしょ?」

「ええ・・・

 今の女王様はそのときの女王様の末裔。だから私たちも、少しでも今の女王様の助けにならないと」

 と言うと、娼婦はいきなり準一に覆いかぶさって、キス。かなりディープなキスです。突然の出来事に準一の眼玉は真ん丸になりました。娼婦は唇を離し、

「さあ、2回戦目、始めましょ」

 娼婦は再びディープキス。今度は準一も素直に受け入れました。絡み合う2人の舌。と、準一は娼婦の左の二の腕に刺青のようなものを見つけました。

「ん、何、それ?」

「え?」

「君の左手にあるものだよ」

 娼婦は自分の左二の腕を見ました。

「あ、これ? これはお客さんを呼ぶ魔法円」

「ええ?」

「この刺青を身体のどこかに入れておくとたくさんのお客さんに来てもらえるから、私たちの大半が入れてます。一種のおまじないですね」

 それを聞いて準一は、あるものを思い出しました。

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