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 太陽光パネルの横、準一と侍従長の会話が続いてます。

「次に出産したのはウルズ王国から来た妃殿下、第1妃殿下でした。今度は男の子が生まれました。さらに姫の年子が生まれましたが、その子も男の子でした。

 順調に見えた王室ですが、またもや不幸が起きました。母親と一緒に食事をしてた第1王子の息子が、母親とともに毒殺されてしまったのです」

「ええ? お毒味役はいなかったのですか? 3代前の女王様は毒殺されたんでしょ?」

「恥ずかしながら我々侍従もこの頃になると、かなり気が緩んでました。

 さらに不幸が起きました。第2妃殿下が子どもたちを両親に見せたいと言い出し、一家で帆船に乗り、スクルド王国に向かうことになったのです。

 いよいよ出航の日となりましたが、乗船直前長女が突然発熱したのです」

「長女って、今の姫・・・ 女王ですね」

「左様。仕方なく姫は宮殿に残り、3人でスクルド王国に向け出港することになりました。しかし、出港して1時間後、3人が乗った船が爆発。3人は帰らぬ人となってしまったのです」

「ええ・・・」

「犯人はすぐに見つかりました。犯人を尋問すると、第3王子とその妃殿下に頼まれたと白状しました。夫婦はすぐに逮捕となりましたが、2人とも無罪を主張しました。王は2人を庇いましたが、怒った国民が第3王子の宮殿に雪崩れ込み、2人を惨殺してしまいました」

「国民が王子夫婦を殺してしまったんですか?」

「左様。その王子、普段から暴言や妄言が多く、国民には大不評でした。また、2人には子ども・・・ 後継ぎがいませんでした。それも悪評の1つになってたのです」

 準一は苦笑して思いました。

「なんだよ。王子夫婦は子どもを生む機械だと思ってんのかよ、ここの国民は?」

「しかし、この事件直後、船の爆破犯はまるっきり違うことを言いだしたのです。本当の犯人は第1王子だと」

「ええ。口から出まかせで言ってたんじゃないですか?」

「それが・・・ 犯人は隠し持っていた手紙を提示しました。それは犯人と第1王子と交わした手紙だったのです。

 王は今回も王子をかこいました。王にとって唯一の男性直系卑属は、この時点でこの王子だけになってたのです。この王子を処刑してしまうと、残るは女子のみになってしまいます。女子が王になるとまた地震魔法が使えない可能性があります。そうなるとまた他国から侵略をうけます。国民も渋々納得し、第1王子は軟禁状態におかれました。

 しかし、王子はすぐに首を吊ってしまいました。こうして王の直系卑属は第2王子の長女、今の姫だけになってしまったのです」

「ずいぶん複雑な事情があったんだなあ・・・ 姫が話したがらない理由がわかったよ」

「これでよろしいですかな?」

「はい。ありがとうございます。いろいろと疑問に思ってたことがすべて解決しました。

 じゃ、私も休むことにしますか」

 準一と侍従長は歩き始めました。


 何もないただ真っ白な世界。遠くの方から声が聞こえてきました。けど、遠すぎて何を言ってるのかわかりません。その声が少しずつ近づいてきます。

「おーい! おーい!」

 と、言ってるようです。その声がさらに近づいてきました。もう明瞭な声です。

「おーい! 大丈夫かーっ!?」

 この声を聞いてた人は、はっとして眼を開けました。

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