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 ここで準一は何か疑問が浮かんだようです。

「う~ん、その1つ前の女王はどうしたんですか? 魔法を使えるものは1人だけのはず。宮殿内で誰かが謀反を起こして、女王を暗殺したとか?・・・」

「いいえ。女王は飛び降りました・・・」

「ええ?・・・」

「2代前の女王は自分がこのまま生きてたら国家国民に迷惑がかかると判断し、自ら命を絶ったのです。子どもたちも3人道連れにしました」

「子どもたちまで?」

「3代前の女王は4人子どもがいて3人が王子、1人が王女でした。それに対し2代前の女王はやはり4人子どもがいて、3人が王女、1人が王子だったのです。次の王がまた女王だったら地震魔法が使えない可能性があります。だから女王は3人の王女、15歳から5歳までの実の娘を道連れに自害したのです。

 それを知った先代の王は怒り心頭になり、執拗にウルズ王国軍とスクルド王国軍を地震魔法で攻撃しました。それだけでは足りず・・・」

 準一がそのセリフを続けます。

「残虐な方法でウルズ王国とスクルド王国の王を処刑した」

「左様」

「う~ん、そりゃあ、ブチ切れて当然だな・・・」

「それから3年後のことです。15歳になった先代王は結婚することになりました」

「15歳? そりゃまたずいぶん早いんじゃないですか?」

「本来我が国の王室は、男子は17~18歳で結婚するという習わしがありましたが・・・」

 準一は苦笑して思いました。

「あは、あんまり変わりないか・・・」

「その時点で王室の正式なファミリーは王だけになってました。すぐに跡継ぎを作らないと大変なことになると判断し、国外から花嫁を迎え入れることにしたのです。

 我が国は王室も基本一夫一妻制です。けど、背に腹は代えられず、法を曲げ、同時に3人の花嫁を迎えることにしました。

 3人の花嫁はウルズ王国とスクルド王国とヴェルザンディ公国から迎えることになりました」

「ええ? ヴェルザンディ公国はいいとしても、ウルズ王国とスクルド王国からお嫁さんをもらうとなると、王は嫌がったんじゃないですか?」

「左様。しかし、例の一件以降ノルン王国は、ウルズ王国とスクルド王国と反目し合ってました。これではいけないとヴェルザンディ公国を含めた4ケ国の首脳が会談し、ウルズ王国とスクルド王国、それにヴェルザンディ公国から1人ずつ花嫁をもらうことになったのです」

「政略結婚ていうやつですか?」

「まあ、そうだったのでしょう。

 結局王は3人と結婚しました。ウルズ王国から来た嫁は第1王妃となり、スクルド王国から来た嫁は第2王妃となり、ヴェルザンディ公国からきた嫁は第3王妃となりました。

 ちなみに、3人とも17歳でした。つまり姉さん女房」

 それを聞いて準一の脳裏にふと疑問が浮かび上がりました。で、ストレートに質問してみました。

「え、12歳の嫁さんがいたんじゃ?」

「ん、誰がそんなことを言ったんですか?」

「あ、いや・・・ その・・・」

 準一は「姫様が」と言いかけましたが、あえて姫の名前は伏せておくことにしました。侍従長の話が続きます。

「ふふ、なんのご冗談か・・・ この国では50年以上も前に法律が変わって、13歳にならないと結婚できなくなりました。12歳で結婚したら王室の者でも逮捕されますぞ」

 準一は姫の言葉を思い出しました。

「私のお母さんは12歳でこの国にお嫁に来た」

 そして苦笑いして思いました。

「あは、あれはやっぱウソか」

「話を元に戻しましょう。15歳になったばかりの先代王は、3人の17歳の王妃と結婚しました。侍従たちは若き王が年上の王妃たちに丸め込まれるんじゃないかと危惧しましたが、みんな仲良くやってたようです。

 3人はすぐに妊娠しました。最初に出産したのは第1王妃。しかし、生まれてきた子は女の子でした。女の子では将来王になったとき地震魔法が使えない可能性があります。そこで侍従や侍女、近衛兵たちが会議し、この女の子は直ちに亡き者になりました」

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