19

 侍従長は懐から小さなベルを取り出し、それをチリンチリンと鳴らしました。すると観音開きの立派なドアが開き、お側ご用人の2人が入ってきました。侍従長は2人に命令です。

「姫に就寝の用意を」

 お側ご用人の2人。

「わかりました」

 2人のお側ご用人は姫を挟むように立ちました。

「さあ、お姫様」

 姫は膨れっ面。

「もう、納得いかない・・・」

 姫はお側ご用人の2人を見て、

「ねぇ、おフロに行こ。今夜もまたあれ、やって見せてよ!」

 侍従は笑みを浮かべ、

「御意!」

 侍女も笑みを浮かべ、

「いくらでもお見せしますよ」

 準一はその発言に疑問を持ち、心の中で発言しました。

「ええ? 女の人がお姫様と一緒におフロに入るのはわかるけど、なんで男の人も一緒に入るんだ?」

 さらに準一は姫の発言を心の中でリピートしてみました。

「今夜もまたあれ、やって見せてよ!」

 そしてまた思いました。

「あれっていったいなんだろう?・・・」

 準一は部屋を出ていく3人の中の、特にエプロンドレス姿の侍女に注目しました。

「しかし、かわいいだなあ・・・」

 推定年齢14か15。身長150cm未満。ちょっとやせ型。ショートボブ。侍女はどうやら準一にはドストライクな美少女だったようです。そのあまりのかわいさに準一はフリーズしてしまいました。ま、本当に絶世の美人なのですが。姫はその準一を見て、

「おやすみ、準一。また明日」

 準一ははっと我に返りました。そして笑顔を見せ、

「おやすみ」

 と返事。

 3人は観音開きのドアから出て行きました。閉まるドア。すると侍従長は顔色を変え、準一を見ました。

「お見苦しいものを見せてしまって、申し訳ない」

 準一はいくつか浮かんでいた疑問を侍従長にぶつけてみることにしました。

「なんであなたたちは、大事な女王様をオレの世界にたった1人で行かせたんですか?」

 侍従長は視線を外し、

「次元の壁を超えることができる人は、姫・・・ 王しかいないからです」

「ええ?」

「この世界で魔法を使える人物は、この国の王だけなのです!」

 準一は困惑してます。

「な、何言ってんのか、全然わかんない・・・」

 侍従長は振り返り、横目で準一を見て、

「ここではなんです。部屋を変えましょう」

 侍従長は振り返り、歩き始めました。慌てる準一。

「ちょ、ちょっと待って!・・・」

 準一は自分が持ってる鎌鼬かまいたちの剣を見て、

「これを収納するさやはないの?」

 侍従長は歩きながら横目で準一を見て、

「自分の心の中にお収め下さい」

 あまりにも突拍子もない発言に準一はびっくり。

「ええ?」

「2代前の王も心の中に収めてました」

「どうすれば?」

「剣を凝視して、心の中に入れ! て願うのです」

「ええ?・・・

 こ、こうか?」

 準一は剣を凝視して、

「心の中に入れ!」

 けど、何も起きません。

「ええーっ、何も起きないじゃん・・・」

 横目で見ると、侍従長は観音開きのドアの片側を開けた状態でこちらを見てます。準一は焦ります。思わず大声で、

「あーん、もうーっ! 心の中に入ってよーっ!」

 すると剣は分子のように細かくなり、そのまま風に流されるように消滅してしまいました。準一はびっくり。

「ええ~ なんなんだよ、これ~?・・・」

 侍従長は笑顔を見せました。その侍従長に向かって慌てて駆ける準一。

「あ~ ちょっと待ってくださいよ~!」

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