16

 次の瞬間準一は不思議な感覚に襲われました。なんと、アスファルトの上に立ってるのです。あれだけのスピードで曲がったのに、なぜかピタッと地上に立ってました。

 気付くと少女は仮囲いを背に立ってました。街道から路地に曲がったすぐのところです。あれ、なんでそこに立ってる? 彼女の腹に思いっきり抱き付いてたはずなのに?・・・

 なお、箒は少女の右手に握られてました。少女は手招き。

「こっちこっち!」

「ええ? ああ」

 準一も慌てて仮囲いを背に立ちました。今飛行してた街道の方を見ると、上空報道のヘリコプターが飛び去って行くところでした。少女はそれを見て、

「ふふ、ちょろいもんね」

 少女は箒に跨り、準一を見ました。

「さあ、行こっか!」

「うん」

 準一も同じ箒の後ろに跨りました。ふわーっと上昇する2人。ある高さに達すると、突然ものすごいスピードで飛び始めました。


 箒に跨り上空を飛ぶ少女と準一。少女が口を開きました。

「そろそろよ!」

 と、2人の行く先に巨大な魔法円が現れました。それを見て驚く準一。

「なんだよ、あれ?」

 少女は応えます。

「マーキングポイント。

 さあ、行くよ!」

 2人を乗せた箒は魔法円の中心へ。箒の先端が魔法円に触れると魔法円は激しく発光し始めました。魔法円の中から青い光子が溢れ出てきます。その光が少女の身体を包み込んで行きます。

 少女は笑顔。一方準一は不安いっぱいの顔でつぶやきました。

「ど、どうなるんだよ、いったい?・・・」

 準一の全身も光に包まれました。と、突然光が消滅。2人の姿はありません。ワンテンポ置いて魔法円も消滅しました。


 次の瞬間、準一はさらに巨大な魔法円の中に立ってました。魔法円は大広間に描かれてます。そう、ここは今朝未明少女が帰ってきた宮殿の中の大広間です。

「こ、ここは?」

 準一の真横には少女が立ってます。魔法円の外側には何人か人影が見えます。侍従長、巨漢なコマンダー、その他数人の兵。準一は特にヒャッハーなコマンダーを見てびっくり。

「ええ?・・・」

 侍従長は温和に話しかけてきましたが、コマンダーは怖い顔でまくし立ててきました。けど、その言語は準一には知らない言語。準一は戸惑うばかり。

「な、なんだよ、これ? 聞いたことない言葉・・・」

 それを聞いて少女ははっとしました。

「あ、いけない!」

 少女は飴玉のようなものを取り出し、それを準一に差し出しました。

「これを口に入れて、かみ砕いて。早く!」

「わ、わかったよ」

 準一はその飴玉のようなものを口に入れてガリっとかみ砕きました。が、途端に顔が渋くなりました。

「な、なんだよ、これ? にが~・・・」

「姫、本当にこの男がこの国を救ってくれる男なんですか?」

 それは侍従長の発言。さっきまで知らない言語でしゃべってた初老の男が突然日本語でしゃべり出したのです。準一は混乱します。

「な、なんだよ、これ?」

 巨漢のコマンダー。

「こんな弱っちい男がこの国を救うんですか?」

 この言葉も日本語でした。どうやら先ほどの飴玉のようなもので準一は、この世界の言語を瞬時に獲得したようです。

 少女がコマンダーに応えます。

「ふふ、この人が私にマナの力を与えてくれた。もしあのときこの人が私にマナの力を与えてくれなかったら、私はあっけなく死んでたわ。そう、この人は私の命の恩人!」

 コマンダーは自分の顔を準一の顔にぎゅっと接近させました。

「この男が? 本当ですかあ?・・・」

 あまりの迫力に準一はビビリました。

「あは、あははは・・・」

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