第6話 LV1同士
俺の問いかけが部屋に木霊する。
魔王は鼓膜に響いた問いに問いを返す。
「お前も? まさか、勇者もLV1なのか?」
「え、あ、その~、まぁ、はい……」
「原因は、あの洞窟か?」
「洞窟? って、それじゃ、あの時いたのは、魔王、お前か!?」
「ああ、その通りだ。まさか、あの時の人物が勇者だったとは……」
「お前さぁ、決戦前になんで洞窟探索なんかして遊んでんだよ」
「決戦を前に奇妙な気配を感じて、念のために調べに行っただけだ。そういう貴様もだろっ」
「まぁ、そうだけど……」
「はぁ~、情けない」
「情けないのはお前もだろ。で、どうする? お互いLV1。ハンデもないから、今から戦うか?」
「冗談ではないっ。世紀の一戦という状況で、お互いLV1!? こんな恥さらしな戦いはないぞ! これは歴史に残る一戦だ。貴様はこんなみっともない歴史を残したいのか!?」
「そりゃあ、嫌だけどさ~。でも、どうすんの? 力はまだ戻りそうにないし」
「停戦だ」
「停戦?」
「停戦して、時間を稼ぐ。そして、お互い力が戻ったところでもう一度戦うのだ」
「ああ~、それで急に停戦とか言ってたのか……できると思ってんの? これまでにお互いどれだけ準備してきたと思ってんの? 今だって戦場はすごいことになってるし……」
「そこを何とかするっ」
「なんとかって、俺は説得できる自信ないぞ。お前はあんのかよ?」
「それは……」
「ほら、ないんだろ。ったく、よくそれで停戦なんてことを」
「黙れ! これは苦肉の策だった! 仕方ないだろう!」
「はぁ、やっぱりここはLV1同士で戦うしかないんじゃ?」
「それだと、勝敗が決した後どうなる?」
「ん?」
「私が勝った場合、お前たちの仲間はどう出る? 貴様が勝った場合、おそらく四天王は命燃え尽きるまで戦い続けるぞ。貴様はその様な状況下で生き残る自信はあるのか?」
「え~、ないですね。たしかに、魔王が勝った場合でも、仲間たちは諦めずに戦い続けるだろうし」
「結局、我々はLV1という醜態を晒して死ぬことになる」
「お~、八方ふさがり……どうすりゃ、ん?」
俺は玉座の背後に置いてある、魔道具類に目が惹かれる。
「あの道具って、もしかして、勇者である俺に何とか対抗しようとして?」
「ああ、そうだ。悪あがきに過ぎないだろうと思ったが、急遽、城中の魔道具をかき集めた」
「なるほど……この状況から何とか生き残る方法は…………魔王!」
「なんだ?」
「停戦というアイデア、悪くないかもしれない」
「何を言う、貴様はそれを否定したではないか?」
「まぁ、聞けって。俺たちの命を犠牲に、和平を訴えるんだ。もちろん、実際に俺たちは死なない」
「ん? 何を企んでいる?」
「つまりだな…………ということだ」
「本気で言っているのか? 我らは全てを投げ捨てることになるのだぞ!!」
「んなこと言ったって、このままだと惨めな死しかないだろ? 生きていれば、花咲くこともあるだろうさ」
「クッ、何故、このようなことに……」
「後悔はあとに置けよ。で、どうするんだ?」
「そうだな、生きていればこそ、か……いいだろう、乗ろう。その三文芝居に……」
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