第3話 魔王城

――魔王城



 何とか魔族たちにバレずにここまでやってきた。

 魔王城前の警備は仲間に倒してもらい、城へ侵入する。


 入ると同時に、四天王の一人が現れた。


「ふははは、よく来たな、勇者たちよ。まさか、多くの兵を犠牲にし、この魔王城を目指すとは。予想外の行動を見せてくれる」

「そう、驚いたんだ……あの、他の四天王は?」

「この先の、魔王様がいらっしゃる玉座へと続く各部屋を守っている」

「あれ、なんで戦力の分散を?」


「それは……わからぬ。だが、時を稼げと言っていた。おそらく、ゆっくりとお前たちを嬲り殺しにしたいのだろう。だから我々は、お前たちを痛めつけるだけに留めるつもりだ。魔王様へおもちゃを献上するためにな。フフフフフ」

「クッ、なんという残忍な真似を。どうするか?」



 戦力を分散してくれたことはありがたいが、このままでも嬲られるどころか瞬殺されてしまう。

 とにかく時間を稼がないと。

 魔王との戦いまでに力が戻る奇跡を願って……。


「みんな。魔王の思惑に乗るわけにはいかない。ここはこちらも戦力を分けよう」

「勇者、何を言っているの?」


「この場は男盗賊に任せる。次は女法術士。その次は男戦士。そして最後の四天王は君に」

「それって、あなた一人で魔王に立ち向かうということ?」

「そうだっ。俺は一人で、頑張る!」


「無茶よ!」


「わかってくれ、女魔導士。これが最良の方法なんだ。勇者と魔王。一対一の決戦。決着をつけるとするならば、これしかない。互いに全力でぶつかり、力の限りを尽くし、勝敗を決する。わかるか?」

「わかんないわよ。なんで、そんな爽やかスポーツ物語みたいなことを!? 四天王が一人ずつ相手になるなら、私たちはそれをみんなで叩き潰せばいいじゃない!」


「それはぁ~、え~っと、え~っとね……魔王は俺たちを嬲るため、四天王を分散したのではないからだ!」

「どういうこと?」

「魔王は、この最後の戦いに、俺と全力で戦いたいのだ。四天王を分けたのはそのため。君たちと四天王が戦い、俺が魔王と戦う」


「仮にそうだったとしても、わざわざどうして魔王の思惑に? 第一、思惑に乗るわけにはいかないと言ったの勇者じゃないの?」

「う……き、聞いてくれ女魔導士! 俺たちと魔族はいがみ合ってきた! だが、この最終戦! この時は! お互いに正々堂々とありたい! そう、魔王自らが言っているのに、勇者である俺は断れない!」

「でもっ!」



「やめないか、女魔導士」

「男戦士?」

「男戦士の言うとおりだよ。僕もそう思う」

「私もそう思います」


「……もう、馬鹿じゃないのっ。わかったわよ。この最後の戦い、互いに死力を尽くしましょう! それでいいのね、勇者?」

「ああ、そうだ。四天王よ、お前もそれでいいか?」


「フッ、まさか、勇者が魔王様の意を汲もうとは。それに気づかぬ私は、四天王として失格だな……種族は違い、憎み合えど、強者同士通ずるものがあるようだ。行け、勇者よ!」



 なんとかこの場を誤魔化し、先に進むことができた。

 このようにして、男盗賊・女法術士・男戦士・女魔導士を四天王にぶつけ、俺は怪我一つなく魔王がいる部屋の前までやって来れたのであった。

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