日々の中に、

@akinu2

第1話 電車にて

欠伸が出る。

昨日も遅くまで残業させられたってのに休めやしない。

最近の情勢のお陰か、立ちっぱなしで職場の駅まで行かなくて済むのはありがたいが、こうして揺られっぱなしだと眠くなってきて寝過ごしてしまいそうだ。

必死に眠気と抗っていると妙な違和感を感じる。

薄目を開けて隣を見れば、中年の男性がこちらを見つめていた。

しまったな、眠気でついつい寄りかかってしまったか。

ハッとした顔をして、今気づいたかのように男性に軽く頭を下げる。

男性はこちらを無言で見つめるだけだったので少し腹が立ったが、

こんな所で喧嘩を売っても仕方がないので愛想笑いを浮かべて姿勢を正す。

それでも、さっきから妙な違和感が収まらない。

原因を探ろうと思ったが、丁度ここで目的の駅に停車する。

まぁ、気にしていても仕方がないかと電車を降りた。


「あっ」


そこで違和感の正体に気づいた俺は降りたばかりの電車へと振り返る。

やっぱりだ。


扉が閉まり、走り出そうとする電車の車窓から乗客全てが食い入るように俺を見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る