48、西の塔
「はあ、おやまあ、これはガーラントではないか。
「おお、これはグロス様。」
そこには魔導師のグロスが、杖をついて息を
魔導師は東の塔に住まうのだが、さすがに
大きくハアと息をついて肩を落とした。
「やれやれ、こう坂や階段ばかりだと年を取ると
おや?なんだ、大きい子を
「グロス様、お久しゅうございます。
これは城から来ました魔導師のリリスという者。少々疲れておりますところを、無理を言って引きずり回している所ですよ。」
「ああ、その子か、
お主、あれを見せる気か?しかしそれ
「は、しかし時間がございません。またいつ
「……ふむ、まあ良い、
『あれ』とは……?
ギルバの目が、好奇心で輝く。
横の若い騎士は
「ギルバ様、およしになった方が……」
若い騎士が、小さな声でささやいた。
「案内はもうよいぞ、お前は帰ればいい。」
突き放した言い方に、若い騎士がキッと顔を
「いいえ、ここまで来ましたからお
ギルバがクックッと笑って階段を上る。
その先に何があるのか、今は
その階段を上りきると、一つのフロアーに出た。
いくつかのテーブルと椅子が、部屋の
グロスが一息つこうかと、横の椅子に腰をかけた。
リリスがうながされて背を降り、驚いた様子で慌てて目をこすり、グロスとギルバに頭を下げる。
ここが塔の中であると聞いて、ようやく状況を
「すいません、ご迷惑をおかけしました。
これは失礼しました、私は風の魔導師のリリスと申します。」
「わしは地に属する魔導師のグロスじゃ。お主の話はようヴァシュラム様より
「はい、ありがとうございます。
騎士様よろしゅうお願い申し上げます。」
「ふん、指輪もない召使いに
ギルバがぷいっと顔を
「騎士のギルバ殿だ。ルランから共に来た
「なにいっ!」
カッとするギルバに、にっこりリリスが微笑む。
その顔はあでやかなほど、
「はい。魔導師では半人前ですので、召使いでかまいません。
御用の
あまりにも素直なリリスの言葉に、ギルバがぐっと言葉に
ガーラントが横で、クックと笑っている。
若い騎士も、一歩出てリリスに手を差し出した。
「私はミラン・リールです。私はここの騎士、とは言ってもまだ駆け出しですが、よろしく。」
その手にリリスが少し驚いた様子で、そっと
このレナントは、
「よろしくお願いします、リール様。私も指輪のない者、魔導師では未熟でございます。」
「ミランでいいですよ。リールは
駆け出し同士、仲良くしましょう。」
「あ、ありがとうございます。」
ドキマギとリリスが頬を赤くして微笑む。
なんだか居心地がいいのか、この慣れない雰囲気には戸惑うばかりだ。
「この上が最上階じゃ、それ、階段はまた別になっている。
あれから上ればドアに出る、
そこだけは木製の階段で、上から釣り上げることができるようになっている。
自己紹介して、皆はさっそく階段を上りその部屋を前にした。
リリスはそこがなんなのか知らず、大きな扉を見上げる。
そこには兵が2人いて、またもリリスたちを止めた。
「これは……ガーラント殿、お
「シラー殿、済まぬ。
こちらの本城より参られた魔導師殿に、部屋をお見せしたいのだ。」
リリスが訳もわからず、ぺこりとお
「魔導師として参りましたリリスでございます。」
髪と目の色に、初めて会う人はほとんどが眉をひそめる。
それを覚悟していたが、何故か少し驚いたように兵は笑いかけてきた。
「おお、そちらが援軍を救われたという……赤い髪だとお聞きしておりましたが、まだこのようにお若い方とは存じませなんだ。
しかし、ここは危険でございまして、城外の方をお入れするわけには行きませぬ。」
グロスが前に出て、2人の間に割ってはいる。
良い良いと、シラーを
「我らが共に入る、今は目をつぶるが良い。
魔導師なれば、見ておかねばなるまいて。」
「しかし……」
兵が2人顔を見合わせ、どうしたものかと考える。
ガーラントは先日ここを見る機会があったのだが、そののち
「中を、見せてお
「これはルネイ様、お
シラー達も頭を下げて道を
「おおルネイ、遅かったな。聖水は?」
「ここじゃグロス。シールーン様のご
グロスが手を挙げる相手は、先日の会議の席にいた魔導師ルネイ。
この城の魔道師を束ねる
すでに髪も白い物が混じり、ふうと息を吐いて手の杖にもたれかかった。
「やれやれ、日頃の運動不足がこたえる。
さあ入ろうか、ここには聖水が必需品でね。私はルネイ、水の魔導師だ。
グレタガーラは君にかなりの迷惑をかけたと聞いた、本当に済まぬな。」
「いいえ、いいえ、とんでもございません。
私の方が大変なお世話になりました、なんと言ってお礼を申し上げればよいか、言葉も浮かびません。」
深々と頭を下げるリリスにルネイがクスリと微笑み、彼の肩をポンと叩きドアの前へ出る。
リリスはあまりの気さくさに驚いて彼を見上げながら、ゆっくりと開くドアに目を移した。
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