5話 出かける前に

朝。俺は柔らかな感触に包まれて目を覚ます。

目の前にはサリーちゃんの胸の谷間があった。

寝てる間にはだけたのだろう。

もう少しでピンク色の尖端も見えそうだ。

少しだけ手でめくれば見えるだろう。


「そーっと……いやだめだ。そんなこと」


とっさに思いとどまる。

既に顔では服越しに感触を確かめてはいるが、実際に生を見たり手で触るのは違う気がする。

それはサリーちゃんの合意の元ですべきだ。


「残念だけど今日は……」

「見ないんですか?」

「うわっ!」


突然の声に驚く。

サリーちゃんの声だ。


「起きてたの?」

「はい。少し前に。それより見ないんですか? いいんですよ遊くんならちょっとくらいイタズラしても怒りませんし、というかむしろされたら嬉しいですし」

「いや、さすがに寝込みをするのは犯罪臭がして……」

「もう。まあ昨日は甘えてくれましたし、続きは今晩にでもね。それじゃ朝ごはんにしましょうか?」

「うん。そうしよう」


俺たちは布団から起き出して、朝食の準備をする。


朝食は軽い準備で済むのですぐに終わる。

トーストとコーヒーだけの簡単なものだ。

朝ならこれぐらいがちょうどいい。


「ジャムとバター、どっちにします?」

「ジャムでお願いするよ」

「はい。分かりました」


サリーちゃんは俺の分のトーストにもジャムを塗ってくれる。

昨日の夕食もだが、アイドルがジャムを塗ったトーストを食べるって結構な幸せだと思う。

普通のファンが知ったらボコボコにされそうなぐらい幸せなことだよな。


「はい。遊くんの分です」

「ありがとう」


サリーちゃんがジャムを塗ってくれたトーストを食べる。

味は想像以上に美味しかった。


「美味しいなこれ。ジャムの風味も結構いいし」

「フランス産のジャムなんですよ。向こうのジャムは香りがいいんです」

「へえ、そうなんだ。どおりで普段食べてたのとは違うわけだ」


俺とサリーちゃんはその後もモーニングを楽しくしゃべりながら過ごした。

そして楽しい時間を過ごしながら食事を終える。


「そうだ。遊くん。今日は家具とかを見に行くんですけど、何が必要ですか?」

「うーん? とりあえずベッドと他には……すぐには思い浮かばないな?」

「そうですか。私の部屋を見て参考にします?」

「えっ、いいの部屋に入って?」

「もちろんですよ。遊くんに見られて嫌なものなんてありません」

「それは嬉しいな」

「それじゃどうぞ。


俺はサリーちゃんに案内されてサリーちゃんの自室へと通される。


「へえ、俺の部屋と広さは同じくらいなんだ」

「はい」

「へえー」


俺はあたりを見渡す。

ベッドとテレビに座椅子。

テレビ棚の中にはソニーの新型ゲーム機とレコーダーがあった。

本棚も大きいのが3つほどあり、中には様々な漫画やライトノベルが入っている。

リビングの棚よりヲタクっぽいものが強い印象がある。

またクローゼットがあり、中にはおそらく下着や衣服が入っているのだろう。

そして部屋の隅には恐らく化粧をするときの化粧台がある。


「結構良いレイアウトだね。でも棚のゲーム機ってリビングにも有ったけどこっちにもあるんだ」

「はい。リビングのは友達が来たようにパーティーゲーム中心で自室には一人プレイ用のゲームって分けてるんです」

「へえ。なるほど」

「こだわりが無いなら私の部屋と同じ感じのレイアウトで物揃えますか?」

「そうだね。化粧台はいらないけど他はそんな感じでいいかな」

「分かりました。じゃあメモを取って……っと。それじゃ準備するので終わったら行きましょう」

「うんいいよ」

「じゃあお化粧するので着替えてから20分ぐらい待っててください」

「OK」


その後俺は部屋で昨日サリーちゃんが借りた柊木さんのお兄さんの服に着替えて、20分ほど待つ。 

鏡で見るが服のセンスは意外と良いんだな。


「お待たせしました。 遊くん似合ってますね。カッコいいですよ」

「そう。ありがとう」

「それじゃ行きましょうか。近くのモールで大体揃うので電車で行きましょうね」

「うんそうしよう」


サリーちゃんのマンションから最寄りの駅までは歩いて5分程度の距離だ。

その五分の間、俺とサリーちゃんは並んで歩く。


「そうだ。手をつなぎましょう」

「えっ、いいの」

「もちろんです」


サリーちゃんはすぐに俺の手を握ってくる。

手からサリーちゃんの温かさを感じる。


「何かうれしいな」

「そうですか?」

「ああ、女の子を手を握るの……恥ずかしながら初めてなんだ」

「恥ずかしくなんかないですよ。遊くんの初めてに慣れて嬉しいです。それにこれから遊くんの唯一の存在になれるなら私も本当に最高ですよ」

「サリーちゃん……」


そんなこと言われるとマジで嬉しいな。

サリーちゃん天使かよ。


「それじゃ一緒に行きましょう」

「うん」


俺とサリーちゃんは手をつないで駅への道を歩いた。

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