エピソード73 終わりを告げる冬休み

「何か話しなさいよ!」


 帰りの馬車の中でオレとフィーネは気不味い雰囲気で沈黙の刻を過ごしていたが、先にフィーネが耐えられなかったようだ…………


「じゃあ、フィーネを送ってからリアナとショーンの話でいいか?」


 オレはあの思い出したくない一日体験ブートキャンプの事をフィーネに話した。


「えーあのショーンが! アタシてっきりリアナとショーンは喧嘩するけど仲が良いのかと思っていたんだけど、リアナがショーンの心を完璧に折ったのね」


 フィーネは笑い声を上げながらオレの話に聞き入っていた。


「そう言えば、フィーネ? 冬休みの宿題ちゃんとしたのか?」


 オレのこの一言でフィーネの表情が凍りついた。


「あっ…………お母様たちと話してばかりだったから……忘れてた………………どうしようクライヴ……後三日しかないよ……」


(厳密に言うと、王都に帰るのが今日の夜だから一日潰れて、明日と明後日の二日間しか無いけどな)


 項垂れるフィーネにオレは救いの手を差し伸べた。


「読み書きと、計算問題は出来るだろう。だからそこはオレの答えを見ながら書けばいいから、冬休みの思い出の一ページ日記だけは自分でしろよ」


(冬休みの思い出一ページ日記とは冬休みどんな事をしたのか思い出に残った事を一つだけ書く感想文みたいなやつだ)


 フィーネは嬉しそうな顔をしながらオレの方を見た。


「ありがとう……ク、クライヴ」


 ぎこちなさは残るが、フィーネがツンツンしてないから、オレにはとても新鮮な反応だった。


 そして、王都に到着したのは夕方過ぎで学生寮の門限三十分前だった。

 急いでショッパーニさんにお礼を言い、学生寮まで走った。


 何とか門限には間に合い、学生寮に入り息を整えた。フィーネも全力疾走したのでかなり息切れを起こしている。


「どうしたの? 二人ともそんなに慌てて何かあったの?」


 女の子のような可愛らしい声が聞こえてオレ達は階段の方へ顔を上げると、シルバーブロンドのショートボブで細くて小柄な中性的な顔立ちの庇護欲を掻き立てられる男の娘モーガンが帰って来ていた。


「モーガン! いつ帰って来たんだ?」


「ちょうどクライヴと入れ違いで帰って来たよ。そしたらクライヴやフィーネはいないし、ショーンもいないんだよ。それでリアナに聞いても【ぼくが悪かったのだ】しか言わないし、困ってたんだよ」


 話しながらモーガンは両手を横に上げて困っているとジェスチャーをしていて、流石のモーガンでも情報量が多過ぎて処理しきれなかったのだろう。


 オレはモーガンにこれまでの経緯を教えたら、神妙な顔をしてオレの心にグサリと言った。


「クライヴが関わると厄介事ばかりだね」


(いやいや、こっちは巻き込まれた事故ですけど)


「なぁモーガン、みんなで食堂に行って夕食を食べながらショーンを復活させる方法について話さないか?」

 

 オレはショーンが冬休み後に登校できるか心配でモーガンに提案し、モーガンは顎に手をつけて考え込んでいた。


「そうだね。このままだとリアナも罪悪感で潰れそうだし」


「じゃあ決まりだな。フィーネ! リアナを食堂でに連れて来てくれ」


「何でアタシがアンタの言う事を…………今回だけだからね」


 フィーネはオレに指示されるのが嫌と言うか恥ずかしかったのかな…………しかしリアナの事も心配だから何だかんだで指示に従ってくれた。


 オレはフィーネにリアナを託してモーガンとともに食堂に行った。先にモーガンに話したい事があったからだ……


 オレは久しぶりの食堂に懐かしさを感じて、さっそくカウンターのメニューを見に行こうした……遠くから殺気を感じる! そこには料理長がいた!

 予想外のオレの登場に料理長はピリピリしていた。さ


「なになに今日のメニューは…………」

 

素敵ステーキな夜空を見よう。そんな僕らは親の目を盗み二階の窓からス|トン【豚】と降りた。夜空には欲しいも干し芋ので溢れてる。彩りのカラーアゲイン鳥の唐揚げ……子どものような台詞を吐きやがる】

 と言う名のトンテキと干し芋と鳥の唐揚げ定食という食べ盛りの男子向けなガッツリなメニューだった。

 オレはカウンターの見習いさんに注文した。


「すいません。トンテキと干し芋と鳥の唐揚げのガッツリとした定食を一つ下さい」


「はい! かしこまりました」


 オーダー受けた見習いさんは奥へ行き料理長に何か伝えている。

 料理長は鬼のような形相で、こちらをしばらく見ていた。

 その後コック帽を脱ぎ力一杯握りしめていた……


(料理長そんな事しちゃうと帽子が痛むよ……)


 そしてオレはガッツリとした定食を持ち奥のテーブルに進んだ。モーガンはさきに席に座っており、定食を頼まず紅茶を嗜んでいた。


「あれ? モーガンは夕食は食べたの?」


 モーガンは微笑みながらオレに申し訳ないって表情をした。


「さすがに門限前にお腹が空いてね。先に食べさせてもらったよ」


(オレとフィーネが帰りが遅かっただけで、普通そうだよな)


 オレは夕食を食べながらモーガンにハッピースマイルポテイトンの庭のレイアウト変更について話をした。

 モーガンは興味を持ち少し身体が前のめりになった。


「相変わらず面白い事を考えるねクライヴは。実物を見てみないと分からないけど……どこに向かっていっているのやら…………」


 そんな話をを続けていると、フィーネとリアナがショーンがに入ってきた。

 リアナも夕食を食べていなかったのが、二人ともガッツリ定食を持ってオレ達のテーブルに起き席に着いた。


 リアナは少し元気がないように見えて、オレは声をかけた。


「リアナ。まだショーンの事を気にしてる? 結局アレから一度も学祭寮に戻ってないのか?」


 リアナはコクリと頷き深刻そうな顔をした。


「騎士を志す身でありながら、人の気持ちを踏み躙る行為は……ぼくの騎士道精神に反する行いだ! ショーンに謝りたいのだがどうすれば…………」


(騎士道精神は分からんが、ショーンに直接会いに言って、心の中にある本音を伝えたら良いのでは? ん? なんか最近そんな経験をしたような……)


「リアナ一人では心細いと思うからボク達も一緒について行こうよ。みんなで行けばショーンもさすがに心境が変化するんじゃないかな?」


 モーガンは優しい笑みを浮かべながらリアナを伝え、オレの方へ【どうかな?】と言いたそうなアイコンタクトをした。


「オレもモーガンの意見に賛成で」


「アタシも良いと思うわ」


 フィーネも乗っかり、リアナの手を握ってリアナを安心させようとしている。


(気持ちはわかるが……お前は宿題があるだろう!)


「みんな…………すまない……ぼくの為にありがとう」 


 リアナはオレ達に一言が感謝し、いつもの凛としたリアナの表情に戻った。


「それじゃ何時から行こうか?」


 モーガンがみんなに聞いた。


「どうせならショーンの実家の定食屋でランチの終了間際に行って昼食をして、その後少しショーンと話をする時間を作って貰わないか?」


 オレはフィーネの事を考えつつ意見を述べた。


「そうだねボクはクライヴの意見に賛成だよ」


「ア、アタシもそうするわ」 


「ボクも今までは闘いに関するショーンしか見ていなかったから、ショーン事を知るいい機会にもなるね」


 みんな肯定的で明日の忙しいランチタイムを避けて昼過ぎにショーンの実家の定食屋に行く事にした。

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