エピソード? フィーネサイド 中編その2
大通りを引き返して石造りの様々なお店に思わず視線が釘付けとなり、魔法具屋や生活魔術機器店等とてよ興味がそそられるが、今は冒険者協会に行かないと!
「着いたぞ」
クライヴの声で冒険者協会に着いた事に気付いた。
「えっ、もう着いたの? 美味しそうな匂いがしたした宿場が有ったし、他にも服屋、宝石店も見えたわよ」
クライヴは文句一つ言わないが、眉間に皺を寄せている。
「早く冒険者協会からお礼をいただいてからだろ」
ふん! 分かってるわよそんな事! でも楽しみなんだから仕方ないでしょ!
アタシは拗ねたように頬を膨らました。
「そうだけど、里から出た事なかったんだから、色々と社会勉強をしたいの!」
「わかった、わかった、終わったら屋台でご飯食べて服屋に行こう。オレも着替えの服欲しいし」
クライヴ、今思いついたって顔してたクセに本当は大した用事じゃないんでしょ! バレバレなんですけど。アタシはそんな顔をしながら内心では……アタシの我儘を聞いてくれて嬉しかった。
「アンタも気になってんじゃない。素直じゃない男は嫌われるわよ」
本当はアタシ……素直じゃないのは……
クライヴが怒ったのか馬車の方に歩き出そうとしていた。
「ちょっと、冗談よ。こんな所で置いて行かれても、困るんだけど!」
アタシの言い方も悪かったけど、そんな冗談はやめてよね。心細くなるんだから……
そんな会話をしながら、真っ黒に塗られた崩れそうな石壁で作られた年季の入った冒険者協会の扉を開いた。扉もギギギと音がなり立て付けの悪さが歴史を物語っていた。
クライヴも同じ事を思っていたようだった。
「外からじゃわからなかったけど意外と綺麗だな」
「ふ〜ん、まぁそんな事よりお礼をたんまり貰って買い物よ」
取り敢えず入学金代は確保して残りは服よ!
クライヴはどんな服が好きなんだろう?
そんな事を考えてクライヴについて行くと、クライヴが受付にいるお姉さんに盗賊のお礼を貰いに来た事を説明していた。
その時、周りの冒険者達の反応がアタシ達をバカにするような視線を向けてきた。
「アイツら子どものお使いと勘違いしてるぜ。ガキどもはお母さんのオッパイを飲んで寝てな」
「ギャッハッハッハ違いねぇ」
アタシもだけどクライヴが命懸けで頑張った事をアイツらバカにしやがって! ここでぶっ飛ばしてやろうかしら? でもクライヴに迷惑をかけてしまうし……
すると受付のお姉さんからも、
「ボク、そんな嘘ついたらダメよ。お姉さん達も忙しいし、あの人達を怒らせると危ないわよ。早くお家に帰らないとお母さんが心配するわよ」
ハァー! アンタこそ何言ってんのよ! 何年受付してるのこの女は! もう我慢できそうにないわ! アンタ達クライヴの事バカにしやがって!
アタシが怒り爆発寸前のところで、クライヴは胸元に仕舞い込んでいた一枚の手紙を受付のお姉さんに手渡した。
「えっ! 失礼しました! すぐ用意いたします」
お姉さんは青ざめた表情で他の職員に指示を出していた。
そしてその手紙の紋章を見た騒いでいたギャラリー達も、アタシ達から背を向けるようにして大人しくなった。
えっ? 一体どう言う事?
「アンタ一体何をしたのよ!」
「ランパード家の紋章の印がある手紙を渡しただけだよ。賞金首の支払いについて記載している手紙をね」
そんな物があるんなら最初から出しなさいよ! このアタシの怒りはなんだったのよ! クライヴの如くバカにされて悔しかったんだからね!
「最初からそうしなさいよ! バカ!」
「フィーネよ! お前はいつになるとツンツンが消えるのだ! 人間関係で揉めないか心配になってきたよお兄さんは」
くぅぅ! 仕方ないじゃない……ルーシー様と話した事で余計意識しちゃうんだから! というか失礼なアンタぐらいよ揉めるのは、他の人とは上手く話せるわよ! 何が兄さんよ…………アンタにとってはアタシはいもうととしか見てないって事なの?
「ハァー、アタシの慈愛に満ち溢れた心をわかってないのはアンタでしょ! それに、いつからアタシのお兄さんになろうとしているの? 頭大丈夫? 変な物でも拾って食べたんじゃない!」
色々とムカついたから言ってやったわ!
そんな事をしていると換金が終わったらしいわ。
「先程は失礼いたしました。最近街道で商人を襲っていた盗賊団二名を生きたまま捕まえた事で少しボーナスがついて小金貨三枚と銀貨四枚になります」
「えっ! マジで!」
「えっ! 本当に?」
「「やったー!」」
「フィーネこれで王都に行けるな」
「服や宝石が買えるわ」
二人で分けて小金貨一枚と銀貨七枚よ。所持金と合わせてもアタシは小金貨二枚と銀貨三枚……移動や食事や泊まる所を考えると王都に行けるけど……学院の入学金が払えないから、クライヴとはそこでお別れになるし、王都に行くのどうしようかな……
するとクライヴが少し険しい顔で、報奨金を全額アタシに渡してきた。
えっ? こんなの受け取れない……
でもクライヴは優しい顔に戻り、アタシがお金もそう多く持っていないのにクライヴの一言で無理矢理王都に連れて行く事になってしまったのではないかと心配していたと説明してくれたらしい。
クライヴがアタシに言ってる事なんか殆ど耳に入ってこないよ……こんなに真剣にアタシの事を考えてくれてるから、嬉しくて、胸がいっぱいでハッキリ覚えてないもん。
アタシが覚えているのは入学には手を付けず買い物をすることを言われたような気がする。
「わかったわよ、クライヴごめん」
その後、クライヴと一緒に屋台で謎肉入りの野菜スープを食べた後に、威嚇ウサギのフライをテイクアウトして、食べながら歩いて次の目的地である服屋に向かった。
スープの謎肉って何なのかしら? まあ美味しかったからいいけど、威嚇ウサギは名前負けね、だって形がウサギが飛びかかろうと威嚇しているだけの揚げ物で特に印象に残らない味だわ。
服屋に近づくとクライヴがアタシに合わせて話をしてくれた。
「オレもこの服一枚だし、何枚か替えがいるかな?」
「そうよそうよ! やっぱり毎日同じだと女の子にモテないわよ!」
服屋に着くとショーケースの衣装がキラキラと輝いているように見えて思わず呟いてしまった。
「へぇ〜アレ可愛い」
マネキンのような石の彫刻には頭に大きなリボンが結ばれており、肩がチラリと見えるフリル付きの黒シャツ、フリフリの黒のスカート、小さなリボン付き白色のサイハイソックスの衣装を身につけていた。
凄く可愛い女の子のイメージの中に少し男の子に興味を持ってもらいたい気持ちが少しデザインに反映されているようで、アタシは目が離せなかった。
こういう服、クライヴどうかな? 好きかなあ?
「へぇー意外、フィーネはそういった服装が好みなんだ」
「ち、違うわよ! ア、アタシは初めて人間の街に来たから、何見ても新鮮なのよ!」
「じゃあ中に入って、服を買いに行きますか〜」
「ちょっと! 絶対こっちに来ないでよ!」
クライヴに見られながら服を選ぶのは恥ずかしいし、さっきの服を着たら女の子として意識してくれるかなぁ……
「はいはい! 買い物終わったらこの会計の所で待ち合わせにしようか?」
「わかったわ」
「馬車の時間もあるから、なるべく早めにね」
「わかってるわよ!」
そして、アタシは女性の売り場に消えていった。
うーん……どんな服がいいかなぁ? アタシ的にはこの服もいいけど……
「お客様、お悩み出すか?」
女性の店員さんがアタシに声をかけてきた。
よし! ここは店員さんの力を借りよう。
「アタシ、これから王都に向かうのですが……その王都での流行とかわからないので、どうしようかと迷ってました」
「それには彼氏さんにも喜んでるもらいたいですしね」
「彼氏!?」
「一緒に来店されたのでデートかと思いました。失礼いたしました」
「デート!?」
ちょっと待って! いきなり何言ってるの? アタシの思考回路がフリーズしたわ。この店員さんの言葉が心の中で響いていて。
「あの、そ、その、まだそういう関係では、ないんですけど、ど、どんな服が男性受けするんですか?」
「お客様のイメージですと、清楚で女の子らしいのがよろしいかと思いますので、こちらはいかがですか?」
店員さんは、白色のチュニックとブラウンのロングスカートかノースリーブの赤紫色のロングワンピースの二種類を持ってきた。
チュニックにスカートか、ワンピースかの2択なのかしら?
私が悩んでいると店員さんは重ねて着るのはどうかと提案してきた。
うん、新鮮だわ。アタシはいつも緑と茶色形が多いから、これは明るい感じで素敵ね。
「お姉さん、アタシこれにします」
「それじゃ革靴と合わせて、銀貨三枚になります」
「あの! お姉さん、もう一つ気になっているのがあって……ショーウィンドウの服は似合いますかね……」
「似合いますよ。その服とは違って可愛らしい女の子の印象が強くなりますよ。そのギャップに彼氏さんが喜ぶと良いですね」
お姉さんは少し微笑みながらアタシに言った。
「じゃあ、それも買います」
「こちらは銀貨八枚になります」
せっかくだからクライヴを驚かせたいなぁ。
「お姉さん、最初に選んだ清楚な服を着ててもいいですか?」
「もちろんですよ」
そして会計の所で待っているクライヴを見つけた。
どんな反応するかなぁ、楽しみだわ。自然と顔が綻んでしまう。喜んでくれるといいな……
「アタシ似合うかな?」
クライヴ少しだけ、動揺したわね。フッフッフ、今のアタシは清楚な感じでいつもと雰囲気が違うでしょう。
「さっきのショーウィンドウに飾ってあったのより似合っているよ」
えっ! アタシはクライヴが喜んでくれるかなぁって思って買った服のことよね……
何でそんなデリカシーの無いことが言えるの!
「ふざけんじゃないわよ! 何でアンタなんかに言われないといけないのよ!」
店員のお姉さんが困り顔でアタシに伝えた。
「お会計は小金貨1枚、丁度いただきます」
そしてショーウィンドウに飾られていた衣装を袋に包みアタシに渡してくれた。
二人とも外に出てたけど、クライヴとは一切口聞くつもりないから! アタシ凄く機嫌悪いから!
謝ってすむと思ってんの、アタシの楽しい時間を返してよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます