エピソード3 第二皇子と勉強

 季節はすっかりと冬になりました。

 この数ヶ月で色々な事が分かってきました。

 母親が過保護な理由は、どうやらオレは毒殺目的に食事に毒をもられ、生死の境を彷徨い高熱を出していたらしい。


 犯人は元公爵令嬢の第一王妃ダイアナ派によるものらしい。ダイアナ王妃は、ダークブラウンのツインドリラーヘアーでキツイ吊り目が特徴で装飾品もド派手ないかにも悪役王妃という印象らしい。


 また母さんの能力や人気に嫉妬しており、第一皇太子を溺愛している事から、オレや母さんが気に食わないらしい。

 それでも毒殺は限度を超えていると思うが、上手く足が残らない様にしている用意周到さが益々怖い。

 そんな事件があったので意識を取り戻してからずっと離宮で過ごしていた。


 だから人と出会う事も少なく、食事の時も夕食以外は部屋食だったのか。

 たまに王宮で会う皇太子のマキシム兄上からも無視されたり睨まれたりと冷たくされるし……


 マキシム兄上は限りなく黒色に近いダークブラウンのロングヘアーと、髪と同じ色をした吊り目が特徴な細身の青年(十六歳)で、甘やかされて育った為か自己中なんだよなぁ。同じ兄弟なのに第二皇子のイーサン兄さんとはえらい違いだなぁ。


 次男のイーサン兄さん(十三歳)はミディアムヘアーの黒髪をサイドに流し、限りなく黒に近いが少し茶色が混じったエボニーの色をした瞳に黒メガネをかけている。

 その気品のある顔立ちから帝国内では文武両道の天才と言われている。

 また、度々城下町へ視察に行っては帝国の現状を自らの目で見る民想いの性格から城下町ではイーサン兄さんの人気は絶大だ。

 腹違いのオレに対しても気さくに話しかけてくれ勉強や剣術の訓練等の面倒も見てくれる尊敬してやまない兄さんだ。



 今日も離宮でイーサン兄さんが講師代わりに勉強を教えてくれる。


「このニーベラル大陸には主に三つの大国と、様々な諸国が存在するんだよ。大陸の北には、大陸一の面積を誇るアレクサンダー帝国、技術の帝国とも呼ばれているよ」

「次に大陸の西には多数の魔法使いや魔術師と聖女が存在する、宗教国家の聖グランパレス皇国があるんだ。

 また聖グランパス皇国から更に西に進むと、闇の森と言われる未開の地があるらしい。入り口付近でさえ深々と草木が生い茂り、霧や闇で視界も悪く、多くの魔物が存在して奥に行くほど影響が強いらしいよ。皇国の魔法使いの結界によって魔物は皇国へは侵入できなくなっているんだ」


「そして大陸の中央には平和の国と呼ばれ、様々な国と関わりがあり、大陸一活気のある国のマクウィリアズ王国があるんだよ。

 北のアレクサンダー帝国とは山に挟まれている為、船での交流が多いんだよ。

 西の聖グランパレス皇国とは開拓中の森の中を抜けないといけないらしいよ。

 東の諸国とは深い森が間に挟まれているのが難点なんだね。

 唯一南側とは隔たるものが少ないようだね」


「最後に大陸には様々な諸国が存在するんだ。大陸の南は殆どが砂漠地帯なんだ。その為作物は育たなく貧富の差がある地域が多いんだよ。

 代表的な国は身体能力の高い獣人だけの国で交戦的なビルマー国かなぁ。

 南西には奴隷商人やその他悪どい商業で栄える治安が悪いシャドバレハト国があるんだよ。

 そして南東にはオアシスを持つ都市や東の諸国と交流のある都市等、四つの都市が助け合うショールストーン共和国があるよ」


「大陸の東には森が多くて存在しているんだ。

果物や家畜や作物が豊富なウーラン国や、人間との親交は滅多にない神秘的な森のエルフの都フォレストリーフ、北東の帝国との国境付近の山岳地帯に隠された洞窟の街ドームガーフ等があるんだよ」


「後はこの大陸のどこかに魔王が棲んでいる魔の国があるという御伽噺ぐらいかな」


「スノウ、少し休憩してから、帝国についての勉強にしようか?」


 イーサン兄さんはオレが理解できるスピードで説明してくれる。

 いつの間にかメイドがティータイムの準備をしており、オレの表情を見てハチミツ入りのレモンティーとハーブが入ったビスケットを用意した。

 

「スノウ、疲れた時には甘いものが一番だね。ハーブでスッキリするね」


(イーサン兄さん、オレにはティータイムより、その心遣いで癒されております。むしろオレの話し相手はイーサン兄さんしかいないので、イーサン兄さん成分が足りなくなり、定期的な補給が必要です。

 もっと笑顔をヘルプミー………………………………はい、授業に入りまーす)


「まずは、自分達の住んでいるアレクサンダー帝国について勉強をするよ。アレクサンダー帝国は他国と比べると広大な領土を有しているが作物は育ちにくい地域なんだよ。

 そして総人口一億人の大国家で、軍事力を国家戦略とし軍事力増強のための政治や財政や経済等を集中的に投入する国家体制を重視しているんだ。

 その背景には、アレクサンダー帝国は唯一魔法の適性がない黒髪の人種だから、他国からの侵略に屈指ない軍事力が必要不可欠なんだ。

 製鉄技術、武具開発、船の製造等の高い技術力と、常時軍に所属している統率された軍隊で、他国を牽制しているんだよ。

 また他国の対応だけではなく、帝国最北部には帝国の約三分の一程であると思われる面積を誇る【忘れられた雪の大地】と呼ばれる雪の大地と標高六千メートルの氷山に覆われている場所があるんだよ。 だけどそこでは人が生活できず帝国の犯罪者等が追放されている場所と言われているんだ。

 どのくらいの人数がそこに送られたのか、また生き残っているのか正直誰も分からないんだ。

 唯一帝国に繋がる平地部分には幅二キロメートル、高さ百メートルの砦が建造されていて、数年に一回程度雪の大地の罪人達が侵入しようと試みてくるんだが、ここ数百年は破られてないから心配しなくてもいいよ。

 まぁその数百年前より砦も遥かに強固になったからね。

 ここからは帝王についての話になるけど、歴史上では代々交戦的な帝王が多かったんだ。

 現帝王の父上マスクウェル・アレクサンダーは無闇な戦争を望んでいなくて、軍事拡張を行いつつも民に重税を課す事をせず、不況時には減税を行ったりして経済の活性化や底上げを図り、民に慕われているんだよ」 


「兄さん質問したい事があるのですが」


「なーに、スノウ。ボクが答えられる事かな?」


「この国の経済は成り立っているのでしょうか?」


「いい質問だねスノウ」


 イーサン兄さんが手に顎を置き少し考え出し、六歳児にどの様に伝えようか悩んでいる様にみえた。

 イーサン兄さんが困っているようだが、さらに質問を続けた。


「減税による税収の低下、それと反比例する軍事費の増加にこのままでは経済は破綻するように思います。これから先には戦争が起こるのでしょうか? 戦争による物流の循環と相手国からの賠償金等で利益が取れますけど……父上は無駄な争いをしないと思いますので、戦争以外でこの帝国を豊かにする方法が何かあるのでしょうか?

 またマキシム兄上の代になると、正直言って帝国の未来が心配になります。好戦的な性格なので、軍備に力を入れ過ぎて民達に重税を課したりしそうです。他にも外交問題を起こして戦争に発展させ、侵略による領土の拡大を図ることで利益を挙げようと短絡的に考えそうです、民あっての国なのに民を蔑ろに考えているので将来国が荒れないか心配です。兄さんが次期帝王なら国は安泰なのに」


「スノウ! そんな事言ってはダメだよ。ボクはマキシム兄上を支えて行く立場なんだから…………そのような未来を回避するためにもマキシム兄上には助言をして、父上が築き上げたこの帝国を維持できるよう善処するよ。

 しかしスノウにはいつも驚かされるよ。計算もできるし物事の理解も早いし、本当に六歳なのか疑いたいぐらいだよ」


(はいスミマセン、心は大人です…………ですからイーサン兄さんの方が本物の天才だと思います)

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