親父がコロナで死んだ日

きゅーびー

第1話20210511

 享年60歳。


 俺の親父が今日、コロナで死んだ。


 俺の親父は正義感の強い人だった。


 俺の親父は優しい人だった。


 俺の親父は自分勝手に見えて誰よりも他人を思いやる事が出来る人だった。


 俺の親父は俺にとって誰よりも尊敬出来る人だった。


 俺の親父は俺とは違って立派な人だった。


 俺の親父は恰好良い人だった。


 俺の親父は肉が好きだった。


 俺の親父は食べる事が好きだった。


 俺の親父は糖尿病だった。


 俺の親父は今日、死んだ。





















 俺が死ねば良かったのに。


 親父じゃなくて俺が死ねば良かったのに。


 コロナはあっという間に人の命を奪い去るのに俺の命は奪わなかった。


 何故だ。


 何故俺はまだ生きているのだろう。


 俺はコロナには掛かって無かった、一緒に暮らしていた俺には掛からなかったのだコロナは。


 こんな事なら俺もコロナで死にたかった。


 もっと早くに処置して居れば死ななかったのかもしれないと何度も考えてしまう。


 保健所や病院はとにかく判断が遅いと何度も思った。


 けれどこのご時世だから仕方が無い事だとも理解はしている。


 それでもやはり俺はもう少し素早い対応がなされていたら俺の親父は死ななかったんじゃないかと思ってしまう。


 俺は親父の死に目にも会えなかった。


 病院には入れなかった。


 濃厚接触者だからだ。


 仕方が無い事だとは思う。


 親父のような目に合う人が俺のせいで増えればそれこそ俺の親父は悲しみ、怒ると思うから。


 だけど俺はこのやり場の無い感情を何処にぶつければ良いのだろうか。


 コロナが悪い、情勢が悪い、行政が悪い、だからなんだと言うのだろうか。


 この感情の行き先は何処に向けても良い事は無いだろう。


 だからこそ俺は今、この文章を書いているのかもしれない。


 この文章を通して少しでもコロナによって苦しむ人が減る事を願って。


 感染予防は自分自身で気を付ける事しか出来ない。


 自分の身を守るのは自分にしか出来ないし、自分の身を守るという事は家族を守るという事にも繋がる。


 俺の親父のように持病を持っている人は特に気を付けて欲しい。


 コロナを甘く見ていると一瞬で命が奪われるという事をもっと多くの人に覚えていて貰いたい。


 何処か他人事のように考えている人は考えを改めて欲しい。


 俺や親父だってコロナの事は何処か対岸の火事のような感覚で居たと思う。


 テレビのニュースで連日の様に感染者が報道され、死亡者や重傷者の人が目に見えて分かっていたのにだ。


 それでも地方に住んでいたから都会とは違うと高を括っていた。


 そんな甘い考えのせいで俺の親父は死んだのだ。


 だからこそこの文章を見てくれている人にはコロナという脅威を甘く考えずにいて欲しいと切に願う。


 そしてコロナという脅威が一刻も早く収束する事を願っています。


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