1.幼少期 共に暮らす者の記憶
1-1 索敵
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すべての人間に当然のように備わっている力……
ほとんどの者がただの「
しかし例外もいる。攻撃性が高く、人の優位に立つことができる力を持つ「
これら二つが共存している場合もある。それを後に「複合型」と名づけるのは僕だが、自分の生まれた索田家もそうだった。索田家は代々、
僕は母親によって目を傷つけられた。それゆえ僕は人生の途中から複合型ではなくなったのだ。
まずはそこに繋がる話から始めよう。
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僕は元華族である由緒正しき血筋の本家に生まれた。
索田家は代々、索敵能力の高い
具体的に言えば、利き目ではない方に「敵」の情景が映し出される。その目を使うことで、敵が背後から攻撃を仕掛けてくる様子や、隠れている場所まで全て分かるというものだった。
これ類似した力は索田家以外の誰にもない。例えば火に関連したものであれば、火をおこす
もっと言えば、索田家は
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「ちちうえ、あれはなんですか?」
完璧に磨かれた刃物同士がぶつかり合うのを見ていて、ふと父親に尋ねた。打ち合っていた片方の刃が弾き飛んだ直後、後ろに控えていた人間がもう一つの武器を渡していた。
僕は今、観客席で父親の隣に座っている。年は二歳。
なぜ二歳の記憶が鮮明にあるのか――ご存知の通り、
「日本刀だ」
父は視線を一点に集中したまま答える。
その目が見ていたのは視界に映るものではなかった。左の瞳だけが金色に輝き(オッドアイと同似た状態だ)、右目は
これは索田家でなければ感覚が分からないものかもしれない。利き目ではない方を隠したときに多少似てはいる。隠した方の目には別の情景が見えていて、この状態のときは利き目だけで周囲――実際に存在するモノ――を見るのだ。
父は武術大会など端から見ていない。専ら索敵していた。
要するに、不審者やテロリストがいないかどうかを常に見張っているのだ。
それにしても、僕が聞きたかったのは刃物が何であるか、ではないのだ。
日本刀のことはすでに知っていた。僕ら本家の人間は、大正時代に建て直した屋敷で暮らしている。日本刀ならばいくつも飾ってあったので、知らぬ間に刀のことを覚えていた。
「ちちうえ、日本刀ではないほうの――
「黙って見ていなさい」
僕の質問は父親の一言で切り上げとなった。
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