差した光芒、傘を閉じれば。

染谷絃瀬

序章

 お母さん、ごめんなさい。 私お母さんの期待に応えられないや。

お母さんが「人生が明るい色で溢れますように。」とつけてくれたこの名前は私には荷が重すぎたみたい。

 なんてことを考えながら私は海岸沿いを歩いた。







 HSP:ハイリーセンシティブパーソン。


 日本人の約5人に1人が持っていると言われているこの性質。

 非常に感受性が強く敏感な気質を持った人を表す。

 たとえば、異常に涙脆かったり、暴力的な描写が苦手だったり、人が怒られているのを自分のことのように思ってしまう。勿論これは自分でどうにかできるものではない。その人に持って生まれた「性質」だからだ。



 私、高崎明色めいろは小学校二年生の時にこの診断を受けた。

朝の会でうさぎの世話係をサボったクラスメイトがみんなの前で叱られているのを見た私が突然泣き出し、不審に思った担任が精神科の受診を勧めた結果この診断がついた。

 この特性は、正直生きづらい。

無意識にいつも気を張っているので、なかなか肩の力が抜けない。

まあこの特性を活かして世の中で活躍している人もたくさんいるんだろう。

でも私はそうではない。どこか息苦しいような気がする。

心にずっとしとしと雨が降っているような、そんな私にも晴れた場所に行けると教えてくれたのは綺麗で儚い君だった。






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