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瑕疵物件かしぶっけん】とは、訳あり物件の事をいいます。



不動産取引において土地・建物に、瑕疵(キズ)がある物件のことです。

この場合の瑕疵とは、『通常備えるべき品質・性能を欠いている場合』の事。

具体的には、『物理的瑕疵物件』『法的瑕疵物件』『環境的瑕疵物件』『心理的瑕疵物件』 の大きく4種類に分けられます。



【黒屋敷】の場合は『心理的瑕疵物件』ね。

別にこの家で、『不幸な事件』があった訳じゃないのに、『ここには毎夜幽霊が出る!』と昔から有名なのよ!



因みに何故【黒屋敷】なのかというと、この辺りは隣町を境にほぼ『赤瓦』なのにこの家の瓦が『黒瓦』だから。



という訳で一番こういうのに詳しいかおるちゃんに聞いてみた☆



Q (理子)どうして【黒屋敷】に幽霊が出るの?



A (薫)「私も寛現寺の住職お爺ちゃんにそれ聞いた事あるわ。

お爺ちゃんの話じゃどうやらあそこには【霊道れいどう】っていうのが通っているそうなの。」



Q 【霊道】って何?



A 「【霊道】っていうのは、『死んだ人達があの世に行く為に通る道』なの。

けっこうあちこちにあるらしいわよ。

その昔、小野篁おののたかむらが地獄に行く時に通っていたと伝わってる京都の『一条戻り橋』もたぶんそのたぐいね。」



Q そんな場所が京都に!?

ところで小野篁おののたかむらって誰?



A 「小野篁おののたかむらは、平安初期に登場した超やり手の官僚よ。詩歌に優れ、かつ不思議な逸話の多い人物なの。


その活躍ぶりは、冥土の世界にも及んだといわれ、閻魔大王の側近として活躍していたというの。

で、その時に使ったと言われてる【霊道】が『一条戻り橋』って言われてるのよ。」



Q へぇ~!そうなんだ!!

ところで、その【霊道】って動かせないの?



A 「【霊道】っていうのは、あの世とこの世を繋いでる道だから、人間の力で動かしたりするのは、寛現寺ウチじゃとても無理よ。

もしかしたら一時的に遮断する事は、出来るかもしれないけど、危険だと思う。

通れなくなった幽霊が立ち往生して溢れそうだしね。



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「という訳でお勧め出来る物件じゃないのよ。」



【黒屋敷】についての説明をすると、流石に三嶋さん達も顔を引き攣らせている。



「「そういうのは、流石にちょっと…… 」」


「ですよねぇ……

あゝ残念…地元の人間じゃないから、いけると思ったのになぁ。 」



今日のアヤメさんは、ずいぶんと黒いなぁ。



「そうなると、他を探すしかないかぁ……

アヤメさん、他には無いんですか?」


「えぇっと、他…他ねぇ?

駅前の『常に家鳴やなりのする家』は、追っ手に見つかる可能性があるから駄目よね…… 」



などとアヤメさんはスマホを見ながら、呟いてるけど、それって全部瑕疵物件ですよね?



「う~ん…繁華街にある『夜、騒音が酷くて寝れない部屋』とか、後は『お化けが出る団地の部屋』ぐらいしか無いわよ?」



『お化けの出る団地の部屋』?

それってもしかして?



「それ…もしかして直ぐそこの団地の?」


「正解よ!流石、徳さん耳が早いわね!最近、売りに出されたばかりなのに。」



ああ…やっぱりそうなんだ。

『幽霊が出る団地の部屋』……それは、【スクモ塚事件※1】で引越した三波みなみさんが住んでた所だった……



でもあそこにお化けが出てたのは、豆狸タヌキとその妖怪お友達の三波さんに対するイタズラが原因。



今はそれが無いから、他より安全かも!



「「「アヤメさん!その『お化けの出る団地の部屋』キープで!!」」」」



思わず3人(?)のセリフが重なった。



「えっえー!?ちょっとそんな勝手に決めないでくださいよ!」


「そんなお化けの出る部屋って…… 」



三嶋さん達は不満そうだけど、ある意味一番安全かも!



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※1


第2章【コンビニの訪問者】に出て来た、犯人の女子高生の元自宅。

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