コンビニの訪問者 13

その日の夜遅く、薫ちゃんから電話が来た。



〔もしもし理子ちゃん。家(ウチ)に【モンペ】キター!〕


理子

〔えっ?いきなり【モンペ】って何?ビックリするじゃないの!?〕


〔【モンスターペアレント】略して【モンペ】!

自分の子供が悪くても、学校や他人に対して、自己中心的かつ理不尽な要求をする過保護で迷惑な親の事よ!


『家(うち)の子に限って、そんな事をするはずが無い!』

とか言って、絶対に認めないの!


三波さんの親がそれだった……

気絶していた娘を保護してあげたのに、私が呼び出したとか言って、怒鳴り込んで来たのよ!あり得ないわ!!〕


理子

〔うわぁ~!最悪~!大丈夫だったの?〕


〔ウチのお爺ちゃんとお父さんが説得しようとしたけど、2時間くらいしても納得しなくてね。

結局、向こうが警察呼んじゃったのよ!

ほんと、あり得ないんですけど!!〕



えーー寛現寺の住職(薫ちゃんのお爺ちゃん)と副住職(お父さん)の2人掛かりで説得出来ないって、どんだけよ!?



理子

〔それは酷い……

で、結局どうしたの?〕


〔更に警察が2時間説得して、なんとか『今日はもう遅いから、明日。』って事で帰ってもらったわ。〕


理子

〔ひぇ~!なんて親よ!?普通は娘を助けてもらったら、お礼言わない?〕


〔それが出来ないのが【モンペ】なのよ!その所為で、さっきようやくご飯食べたとこなのよ!〕


理子

{えっ?もうすぐ11時だよ!?〕


〔明後日から【同人誌イベント】だって言うのに……

これじゃ行けそうにないわ。楽しみにしてたのに~!仕方ないから、一緒に行く予定だった友達に、全部頼むしかないわね。〕


理子

〔うわぁ…… 〕



そんな会話をしていて、ふと妙な視線を感じて窓の方を見ると、物凄い形相の4匹の豆狸(タヌキ)と4匹の稲荷狐(キツネ)が張り付いていた……



「ひっ!!」


〔どうかしたの?理子ちゃん!?〕


理子

〔ちょっちょっと窓に大きな虫がくっついてて、ビックリしただけだから!〕


〔ならいいけど。じゃあ、もう遅いから切るね。おやすみなさい。〕


理子

〔うん、じゃあね。おやすみ…… 〕



プツン



電話を切った途端、鍵を掛けていたはずの窓をガラッと開けて、8匹ものあやかしが押し掛けて来た。



また増えてるんですけど!?



「「どういう事じゃ!?宴会は!?」」


「「「「稲荷寿司楽しみにしてたのに!!」」」」


「「アイツらの所為じゃ!【モンペ】とか言う新参者め!!」」



あぁっ!なんか誤解してるーー!!



「ワシらの実力を見せてやろうぞ!!」


「「「おーー!!」」」



と豆狸(タヌキ)が仲間を鼓舞した。2匹はもしかして、古狸かしら?

すると今度は稲荷狐(キツネ)の方も、負けじと叫ぶ。



「豆狸(タヌキ)には負けられん!稲荷狐(キツネ)の意地を見せてやろうぞ!」


「「「おーー!!」」」


「「どちらが負けを認めさせるか、競争じゃ!!」」



そう言って私の部屋でひとしきり騒ぐと、8匹のあやかし達は猛スピードで走り去って行った。

豆狸(タヌキ)と稲荷狐(キツネ)の競争の標的にされた三波さん家(ち)は、たぶん大変な事になるだろう。



とりあえず開けっ放しの窓を閉め、寝る事にする。

おやすみなさーい。







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