コンビニの訪問者 7

一方その頃、理子の部屋の縁の下では……



「ほほぅ……

お嬢達、面白い事を考えとるのぅ。ここは一つ、“ワシらも協力”してやらんとなぁ~。」



と、満月が不穏な事を考えていた。豆狸(まめだ)は本来、イタズラ好きな妖怪。昨日化かした事に味をしめた満月は、今日もイタズラしてやろうと、ほくそ笑んでいた。



「コレは《スクモ様》をお救いする為の、歴とした正義の行いじゃ。決してただのイタズラではないぞ!

そうじゃ!皆にもこの事を教えちゃろう♪」



豆狸はイタズラ好きな妖怪です。

大事な事なので、2回言いました。



その日から、三波マサエは世にも恐ろしい体験をし続ける事になった。学校から家まで、迷いに迷ってようやく家に帰ってトイレに入れば団地の中の1室なのに【見越し入道(のぞき魔)】。

寝ようとしたら、朝まで【小豆とぎ(何かをといでいる音)】がして、寝不足。

通学路では、大勢の生徒の行き交う中で誰かに【小豆とぎとぎ(スカートめくり)】されて大恥をかかされたり……



それが数日続いたかと思うと、今度は夜道で【一本だたら(一本足のお化け)】に追いかけられ、慌てて駆け込んだ店の人達は【普通の人間(キツネの顔)】。



親や友達に言っても、誰も信じてくれない……

何しろ、見えているのも聞こえているのも彼女だけ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三波さんは遂に、コンビニのバイトを辞める事になった。

精神的に疲れて、それどころじゃなくなったみたいね。



「なんか最近、三波さん誰かにイジメられてるみたいね。精神的にかなり参っているみたいよ。今なら《スクモ様》のフリして出れば話しを聞いてくれるんじゃない?」



誰かのイジメ…犯人?は、ウチのタヌキとそのお友達。『《スクモ様》の為だ。』と言う大義名分を掲げて、妖怪(お友達)に片っ端から声をかけたみたいなの。



でもってそれを口実に、やりたい放題。



その所為で三波さんを怖がらせるのが、最近の妖怪達の娯楽になっている。



《スクモ様》は、そんな三波さんの姿を見て、『もっとやれ!』みたいな事を仰って、喜ばれているそうだけど……

このままだと《スクモ様》が邪神とかにならないか心配。



今朝見かけた彼女は、目の下に隈を作りフラフラしていて、逆に《スクモ様》は生き生きしていらっしゃった。



「それでね…準備も整ったし、そろそろこっちの話を聞いてくれそうだから、明後日あたり仕掛けてみようと思うんだけど、理子ちゃんはどう思う?

もちろん、他の皆んなの都合もあるけど。あ、坂野君はいつでもOKだって!」


「皆んなの都合かぁ~。徳さんと満月は基本暇だから、大丈夫じゃない?

六(りく)も夕方なら大丈夫だと思うけど、聞いてみるね。」


「じゃあ、連絡宜しくね。倉本先輩には私から連絡しとくから。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「次は肥溜め(※1)にでも落としてやるのはどうじゃ?」


「この辺りにも、もうそがぁな物(もん)無いで…… 」


「そうなんか?つまらんのぅ。」


「前に業突く張りの庄屋を化かした時は、面白かったのぅ!」



私が説明しようとしても、さっきからずっとこの状態で、誰も話を聞こうとしない。

妖怪達の集会所と化した、我が家の庭……



私の周りには豆狸(タヌキ)、県内で一番権威のある稲荷狐(キツネ)、小豆とぎ等いろんな妖怪や神様の使いが集まって、まだ悪巧みをしている。



「ちょっと!私の話聞いてた?そろそろ仕上げにかかろうと思うのよ。」


「「つまらんのぅ。もう終わりか?もうちっと遊んじゃあ駄目かのぅ?」」



と、徳タヌキと満月タヌキが声を揃える。やっぱり、コイツら“遊び”だと思ってたのね!



「駄目に決まってるでしょ!早く《スクモ様》の【銅鏡(鏡)】を修復してもらって、《スクモ様》を元の場所にお戻ししないといけないのよ!だからお願い、いい加減に辞めてくれないかな?」


「「仕方ないのぅ。」」



やっと解ってくれたのね。そう思って油断した私が馬鹿だった。



「「いい加減で辞めてやるわい!今日は化かし放題じゃ~!!」」


「「「やっふ~♪♪」」」



そう言うが早いか、妖怪達は一斉に

飛び出して行ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それで皆んな居ないのか……

流石、妖怪…揚げ足取りが上手いな。」



遅れてやって来た六(りく)に豆狸達の事を話したら、笑ってるし……



「とりあえず、勝屋さんの計画書を見せてくれるかな?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※1


肥溜めは、伝統的な農業設備の一種。農家その他で出た屎尿を貯蔵し、下肥という堆肥にするための穴または、大きめの水瓶。穴の方の外見は井戸に似ている。 水瓶の方は、素焼きの瓶が多く、口径1~1.5m程度のものを土中に埋め使用する。一般的には、薄める為の水を入れる水瓶と一緒に設置されることが多い。


因みに作者の子供の頃に、友達の家にありました。目印になる物が無いので、気をつけないとハマる。ほぼ罠ですよね。



(参考文献 ウィキペディア)

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