コンビニの訪問者 5


コンビニを出た私達は、薫ちゃん家で今視て来た事について話し合った。



「『コンビニメープルに現れる睨む幽霊』の正体が、どうやら【スクモ塚】の《スクモ様》の可能性が高くなったわね。」


「もうほぼ決定じゃないの?アレは“寛現寺(ウチ)”の管轄外だわ。」


「あの女、霊感皆無。」


「このままだと、《スクモ様》の方が危ない気がする。あんなにボロボロになられてて…… 」



この辺りは昔から米どころと呼ばれ、【酒造り】で有名な地域。

当然、豊穣神の【スクモ神様】はこの辺りで“一番崇められている土地神様”なのだと西森さんも言っていた。



その割には皆んな知らなかったけどね。



「とにかく三波さんに《スクモ様》に謝罪させて、お怒りを解いてもらうしかないよ。」


「どうやって?あの霊感の無さだと、《スクモ様》の事説明しても、理解してもらえないんじゃないかな?」



本当にどうしたらいいんだろう?ちらっと満月の方を見てみると、なんか悪そうな顔をしている。



きっとなんかやるつもりだ。



帰りは薫ちゃんのお母さんが、家まで車で送ってくれる事になったけど、満月は『寄る所があるから。』と言って、何処かに行ってしまった。



ウチに帰って暫くして、坂野君からメールが届いている事に気が付いた。


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(チャット)


{もうビックリしたわよ!本当に《スクモ様》らしき霊がいるんだもの!}



坂野

{マジか!?ヤバいだろそれ!

そうだ!ダチに聞き込みしたら、三波マサエと連んでいた奴の名前と居場所が解ったぜ。

名前は【“三盛(みつもり)”夕子】。素行不良で県内の学校に入れなくて、隣県の全寮制の女子校W学園にいるそうだ。}



ネットで調べたら『W学園は素行不良の生徒を専門に預かり、教育する学校で校則もかなり厳しい。』と書いてあった。



確か三盛さんって松中に2年生の時に他県から転校して来た派手な人よね?

三波さんあの人と連んでたんだ。


{小学校の時、三波さんとは何度か同じクラスになった事があるわ。当時からあまり素行がいい方じゃなかったわよ。}


坂野

{俺も何度かあるけど、アイツ理科の実験の時、全然参加しないで『怖くて出来な~い。』とか言って皆んなからヒンシュク買ってたぜ!俺は嫌いだ!}


理子

{坂野君、理科系大好きだもんね。私は何故か同じクラスになった事無いなぁ。}


{《スクモ様》は『鏡を返せ!』って言ってたから、どっちかが【鏡】を持っているって事よね?}


坂野

{両方って事もあるぜ。}



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日、学校に行く時に満月の巣穴を覗いたけど、何時もなら挨拶くらいしてくれるのに、珍しく出て来なかった。



学校に着くと、ちょっとした騒ぎになっていた。



「あ!山根さんおはよー!」


「おはよー西森さん。どうしたの?騒がしいけど?」


「2組の三波さんが昨日の夜10時過ぎに、呑み屋通りで補導されたんだって!それで校長室に親も呼ばれてるって、今大変な騒ぎなの!」


「なんでそんな所に?」


「本人は『バイトから家に帰る途中だった!』って言ってるらしいけど、あり得ないわよねー。三波さんが住んでる団地ってバイト先の直ぐ近くでしょ?それなのにどうしたら、呑み屋通りの方に居たのか説明が付かないわよね? 」


「そ…そうね。」



たぶんそれ、ウチの“豆狸(タヌキ)”の所為よね。

それで今朝出て来なかったのか……

たぶん化かされて、あちこち歩かされたんだろうなぁ……



《スクモ様》大丈夫だったかな?

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