アルバイト始めました 3

「お疲れ様~。豆田君達、今日は賄い食べたらもう帰っていいわよ。

理子も瑞稀みずきと一緒に食べておいてくれる?

お母さん達、これからちょっと出掛けて来るから。」



珍しい…こんな時間から、夕食も食べずに2人で出掛けるなんて。



「いいけど、どうしたの?」


「昨日また、国道で事故があったでしょ?

お母さんの友達がそれに巻き込まれて、怪我をしたの。

軽傷だったから家にいるんだけど、たいへんそうだから、お惣菜を届けに行って来るわ。」


「そうなんだ……

お母さん達も気をつけてね。」


「大丈夫よ。お母さん達、運だけは良いのよ。

それに国道は通らないから。

じゃあ、行って来るから戸締り宜しくね。」



そう言ってお母さんは、お父さんと車で出掛けて行った。



「大丈夫かなぁ?」



暫くその事を考えていたら、いつの間にかお店に降りて来ていた瑞稀に呼ばれた。



「姉ちゃん、ご飯。」


「あれ?徳さんと満月は?」



何時もなら、満月が食事を出してくれるのに……



「あの2人なら、姉ちゃんが何かブツブツ言ってる間に、『急用を思い出した!』って言って慌てて帰ったよ。」


「えっ!?そうなの?

全然気が付かなったわ。」


「姉ちゃん、そういうの直さないと、そのうち痛い目にあうぞ!

それより、ご飯早くしてよ。

お腹空いた~。」


「あ、ごめん!直ぐ温めるから。」



その日の夜遅く…お母さんとお父さんは、かなり疲れた様子で帰って来た。



「行きは順調だったのに、帰りに知り合いのお店に寄ろうとしたら、何故か道に迷って辿り付けなかったのよ~。

いつもの道だし、迷う様な所じゃないのに……


国道の向こう側にあるお店だったのが、いけなかったのかしら?

そのうち閉店時間になったから、諦めて帰って来たんだけど、今度はすんなり帰れたのよね。

まるで、タヌキに化かされたみたいだわ。」


「えっと…そこは普通、キツネじゃないのかな?」



しかし、お母さんはタヌキ説を主張する。



「そう言えば家の敷地にあるほこらって、【タヌキ祠】ってあるけど、いつからあるの?」


「今の祠は理子が生まれた頃に町の皆さんの寄付で作った、新しいのだけどね。

昔は駅向こうにある、【フルムーンパレス】がある所にあったのよ。

それがまぁ、いろいろあってね……

家はペンション小さな宿で庭にタヌキが来るでしょう?

だから、今は家にあるのよ。」


「そうなんだ……。」



【フルムーンパレス】と言うのは、この町に伝わる【豆狸の宿】って昔話に出て来る、小さな宿のモデルと言われてた【満月屋】っていう老舗旅館があった所に新しく出来た海外資本のホテルで、見るからにすっごくおしゃれ!



一度、こっそり敵状視察と称して、幼馴染みと見に行ってみたけど、流石は海外資本…家とは全然違う……



結局、カフェでコーヒー1杯800円を支払って 幼馴染みの奢り帰って来ちゃった。



幼馴染みに言わせると、『そもそも比べる物が違う!』そうだ。

家はペンションで、あっちはホテル。



幼馴染みの言う事も、もっともだよね。



その幼馴染みも今年から徳さん達が通ってるH大に通う事になって、ここ最近リクリエーションやら何やらで、忙しいみたいで会えてない……



でも、もうそろそろ来てもいい頃だと思うのよね。

明日辺り来ると期待して、今夜は寝る事にした。



おやすみなさーい。










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