ウチで雇ってるバイトがタヌキって言ったら誰か信じる?《第四章 狐畏憚編》

砂月ちゃん

アルバイト始めました!

アルバイト始めました 1

私の名前は山根理子やまねりこ



両親と私と小学5年生の弟、瑞稀みずきの4人家族で、ペンション兼喫茶店【ストロベリームーン】をやってます。



この春から高校生になるので、両親の喫茶店で春休みに入ってからアルバイトを始めました。



お店は美味しい井戸水で淹れたコーヒーと、お母さんが作ったデザートが美味しいって女性客に大人気。

もちろん、お父さんの料理も!



で、その人気に一役買っているのが、近くの国立H大の文学部に通う2回生の豆田徳行まめだとくゆきとその従弟の豆田満月まめだまんげつのイケメンコンビ。



2クールくらい前の某特撮ヒーロー番組に出て、コレが若いお母さんたちに大ウケし、そのおかげで出世した俳優さん達に凄く似ている。



と、態々遠方から2人を見に来る人も少なくない。



接客担当で人当たりの良い徳さんこと徳行と、料理担当で基本無口な満月は、去年から家のお店でアルバイトをしてくれているんだけど……

何故か…一昨年までアルバイトに来てくれていた、双子の望月兄弟も、そんな感じだった…と言うか、なんか同じ人にしか見えない気がする。



そう感じているのは、どうやら私だけみたい……



「今日はアヤメちゃん遅いわね~。

もうすぐランチタイム終わっちゃうのに……

何かあったのかしらね?

理子ちゃん。」



私に声をかけて来たこの人は、近所に住む秋山ユカさん。

昼間、お子さんが小学校に行っている間やランチタイムの忙しい時間帯だけパートに来てくれている、ちょっとふくよかなお店のムードメーカー。



カランカラン♪



「「「「いらっしゃいませ。」」」」


「おはよ~。ランチお願い~。

コーヒーは、うんと濃い奴でお願いします。」



そう言ってランチの時間ギリギリでお店に入って来たこの人は常連客で、近所に住んでる美園アヤメさん。

町にある総合病院の看護師さんで、夜勤明けの日はいつもランチを食べに来る。



「もう、『こんにちわ』だよ♪アヤメさん。

て…うわー!どうしたんですか?いつにも増してボロボロじゃないですか?」



いつも夜勤明けは、ボロボロだけど、今日はいつにも増して酷い……



「それがさぁ~聴いてよ~ 。

昨日の夜、また国道で事故があってね。

しかも立て続けに3件も……

3件目なんて団体さんで、仮眠も出来なかったのよー。

しかも、中には『お化けの暴走族が、追いかけて来た!』とか言って、錯乱してる人までいてたいへんだったの!

その所為で寝不足で…ふわぁっ…今までずっと寝てたのよ。」



そう一気に愚痴ってアヤメさんは、テーブルに突っ伏してしまった。

本当にお疲れみたい……



「ご苦労様です。はい、これ俺の奢りです。」



そう言って、徳さんはアヤメさんに、自家製ヨーグルトを差し出した。



「ありがとう~。徳君優しい~。」


「ランチ出来た…… 」


「ああ~今日も美味しそう~♪」


「はい、どうぞ!今日のメインは、アヤメさんの大好きなマスター特製のハンバーグ煮込みです!」


「やった♪いっただっきま~す♪」



よっぽどお腹が空いていたらしく、アヤメさんは、徳さんが運んで来たランチをパクパク食べ始めた。



「それって朝のニュースで言ってたのですよね?」


「最近、本当に多いわよねー。

この前も事故があったばかりでしょう?

家も旦那に気をつける様に、言わないと…… 」


「せめて、私の夜勤の日に現れるのは、辞めて欲しいわ。

年齢的に仮眠無しは、そろそろキツいのよね~。

このままじゃ行き遅れになりそうだし…… 」


「アヤメちゃんまだ若いんだから、そんな事言わないの。」


「そうですよぉ~。病院でアヤメさんを見かけて『お仕事してる時のアヤメさんがかっこいい!』って憧れてる人達もいるんですよ!」


「えっ!それホント!?」


「「ホントホント!」」


「じゃあ、私頑張るわ!!」



相手は秋山さん家のお子さんとか、瑞稀の友達だけど、ここは黙っておいた方がいいわよね……



何時もの様に3人で話していると、突然徳さんが……



「アレ?そういえば、秋山さん時間大丈夫なの?

もう退勤時間過ぎてるよ?」



徳さんに言われて、時計を見た秋山さん。



「あ~!?しまった!もうこんな時間!?

お喋りに夢中で、時計見て無かった!

急いで帰らないと!

徳君、教えてくれてありがとう!!

じゃ、また明日ねー!!」



そう言って、慌てて帰って行った。



「それにしても、【お化けの暴走族】かぁ…… 」


「この町ってけっこう古いから、何かいてもおかしくないかもよ。」


「もう…やめてよ、徳さんてば!」



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