帝都のみんなは俺の嫁

ぽろりん

帝都陥落

第1話 おのぼりさん

「うわぁ、ここが帝都かー!」

小さな丘の頂上に達した俺は目の前の見たこともない巨大な建造物に魅了された。


10mはあろう大きな壁の先には、いかにも王族の権威を表すべくして建てられたような無骨かつ煌びやかな城がそびえ立つ。


「いやー、ほんと一時はどうなるかと思ったぜ…」


およそ1ヶ月前に交通事故で死んだはずの俺は気がつくとこの世界にいた。


なんかのゲームで見たような剣と魔法の世界。

ここに転生する前に会った神を名乗る変な爺さんには俺だけの「特別な能力」を授けるだの言われたけど、今んところなーんも実感が湧かない。


「はあ、俺だけの能力ねえ…。」


城門着くと門番から身分証を提示するように言われた。


げっ、そんなもん持ってねえよ…。


「ミブンショウ?って何ですか?」


「あぁ、田舎から来たクチね。」


苦しいだろうが外人風に装えば行けるのではないかと思ったが案外その通りにいきそうだ。


「あんたが何者でどこから来たのか分かるものを…ってあなた。ちょっとそのフードとってくれるかしら?」


兵隊に促されるままフードを取ると、辺りが響めきだし、突き刺すような好奇の視線が俺へと向けられた。


「こ、この子、オトコよ!!」


兵隊の言葉に呼応するかのように後方に控えていた他の兵隊達がぞろぞろをボクを囲んで行った。


「あの〜、何かボクしちゃいましたか??」


兵隊は震えた手でぎゅっと握りしめてた槍をカランと落とし、ボクに覆い被さるように向かって来た。


「あ、あ、あんた!男が何でこんなところに!?」


「邪魔よ!この子は私のものよ!」


「ちょっ、どきなさいよ!」


怒号の中、もみくちゃにされたボクはいつの間にか気を失っていた。


次に目を覚ますと、すぐにそこが夢の中だと気づいた。


目の前でくつろいでいる爺さんとは会うのは2度目だ。


「なあ、爺さん。俺の特殊能力ってなんだよ?さっきあっけなく女の子達にめっためたにされたんだけど?」


「ふぁっふぁっ。女性達の反応を見ても尚気づかぬとは、案外鈍感なんじゃなぁ」


「はい?訳わかんねえよ。…って意識が朦朧と…。」


消えゆく意識の中で爺さんが言う。


「お主の最大の武器は【男である】ということじゃ」


そしてまた目を覚ました時、見知らぬ天井がそこにあった。


「痛っ。ここはどこだ?」


「ここは帝都、フェルトニールよ。大丈夫?」


白いまつ毛の女の子は初めて見た。


「君は?」


俺がそう聞くとその娘はヤリスと答えた。


「あなた門番達に襲われていたみたいだったから横から攫っちゃったっ。」


冗談まじりな言い方でニコッと笑うヤリスの頬が少しだけ赤みを帯びた。


「あ、ありがとうな。本当に助かったよ。」


正直に言ってタイプだった。

北欧の人みたいな白い肌が特に綺麗だ。


「それじゃあ私、ご飯持ってくるわね」


「俺も手伝うよ!」


そう言って立ち上がろうとした俺は違和感に気づいた。


「えっと、ヤリス…ちゃん?この手足の手錠は…?」


ヤリスはニコリと微笑む。


「それはそうですよぉ。オナペットに逃げられたら悲しいじゃないですかぁ。」


まるで獲物を見るかのように俺のアソコの方を見てくるヤリスを前に背筋が凍りつく感覚を覚えた。

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