修学旅行

10

三年生のメイン行事といえば修学旅行だ。


新幹線の乗り場でも、新幹線車内でも、私は隙あらば梶先生に近づいた。


「先生~、一緒に写真撮りましょう!」


こんな時くらいしかお願い聞いてもらえないもの。


美結にカメラをお願いして梶先生とのツーショット写真を撮ってもらった。


「一生の宝物にする!」


「あはは、大げさ~」


美結は呆れたように笑った。


今日は班行動の日だ。

あらかじめ計画した予定に沿って、市内の主要施設を巡る。パラパラとしおりを捲っていると、目の前に影ができて私は顔を上げた。


「杉浦さん、梶先生はみんなのものなんだから、一人だけ図々しいことしないでくれる?」


同じ班の麻紗美が睨みを効かせて立っている。


「え、図々しいって……」


「梶先生を好きなのは貴方だけじゃないってこと。抜け駆けしないで」


キッと睨みつけられ、その迫力に私は言い返すことができずに唇を咬んだ。


麻紗美も梶先生のことが好きなんだろうか。

思わぬライバル出現だ。

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