第10話 ミラクルな家族
結局、今回の騒動はアブー女王をミラクルワンに取られたアブールの王族に末席を置くキルマーの仕業であった。
ミラクルワンの留守のうちに、ミラクルワンの愛する(?)尼崎を無茶苦茶にしてやるという八つ当たりであった。
キルマーはアブー女王の年下の従弟であり、幼少の頃よりずっとアブー女王の事を慕っていた。密かに、結婚を目論んでいたほどであった。それを、どこの馬の骨とも解らない宇宙人に寝取られたのが気に食わなかったのだ。
「もう、お父さん機嫌直してよ。昌子ちゃんもいるのに……。」リビングに、四人は座っている。
「ワシは別に怒ってないよ。それよりも、秀幸、お前にスティックを渡したのに変身もせずに、昌子を危険な目に合わすなんて……、情けない」
「渡したって……、これ電池切れて、漏電してるし……、だいたい、こんな四角い電池なかなか売ってないぜ!」それは006P型乾電池という昔のラジコンとかに使われていた電池であった。廃版という訳では無いが最近はあまり見なくなった。秀幸は文句を言いながら、ストックの中を掃除する。
「おじ様、私は大丈夫です。それなりに楽しかったですし……」昌子は、秀幸を庇うように微笑む。
「ごめんなさいね。キー坊も本当はいい子なんだけど、今回は悪戯が酷かったわね」母が申し訳なさそうに謝る。
「悪戯で済むか……」父がボソッと呟く。なんか拗ねているようである。こういう事は男の方がしつこいようである。
「もう、お父さん!いつまでも」母は少し怒った顔をした。
「うふふ、良いですね。仲が良くて……、羨ましい……」言いながら少し秀幸の側に昌子は体を寄せる。しかし、彼女の行動に秀幸は気づかない様子であった。
「おい、秀幸……、家の中であまりスティックを……」父がそこまで言ったところで、秀幸が嬉しそうに立ち上がった。
「よし、綺麗になった!……あっ!!」秀幸は掃除を終えたスティックのボタンを勢いで押してしまった。その瞬間、激しい光が彼の体を包む。
「バ、バカ!!」父は母を庇って覆い被さる。
激しい勢いで家が崩壊し、その中から巨人が姿を表す。父、母、そして昌子はうまく倒壊から逃れたようで無事であった。
「ディア……」そこには申し訳なさそうな顔をしたミラクル・セブンの姿があった。
その姿を唖然とした顔で、三人は見つめる。
「この大馬鹿息子が、家の中で変身する奴がいるか!家が……、あと、20年もローンが残ってるんだぞ!どうしてくれるんだ!!」父が絶叫している。
「ディア……」巨人は頭をかきむしりながらに謝る。
「まあまあ、お父さん、みんな元気だから良いじゃないですか」母はにこりと微笑む。
「そんな問題か!」父の目にうっすらと涙が浮かんでいた。
おしまい
帰ってきたミラクルワン 上条 樹 @kamijyoitsuki
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