後は待つべし
「…よし。これで後は焼けるのを待つだけ」
充実感に満ち溢れた私は、みんなに告げる。
「何か大仕事を終えたような顔だけど、実際やったのは小さい炎で点火しただけっていう…」
「しょうがないわよ、アヤはレベル1なんだから」
「そうですよ。アヤさんは、今レベル1なんですから。昔とは違います」
イオちゃんの毒舌を、カロンさんとシュミカちゃんがフォローしようとして、逆に私の心に刺さっている。
いててて。
「もう、みんな毎回それ言うのやめてよね。好きでレベル1なわけじゃないんだから」
「また言ってる」
「また言ってるわね」
「もはや恒例行事ですね」
3人が同時に言う。
恒例行事って。
なんかやだな。
「ねえアヤ。これ竈門の温度下がってない?」
ふとカロンさんが竈門を見ながら言う。
「え、ほんと?」
「うん、下がってる」
灼熱嬢イオちゃんが一瞥して断言する。
「アヤさん、再点火で火力を足しましょう!」
シュミカちゃんが私を見つめて息巻く。
「それが、もう魔力がさっきので尽きちゃって…」
「なっ…」
すいません。
魔力貧乏なレベル1ですいません。
「しょうがないなぁ、ファイヤ」
スッと暖炉に手をかざしてイオちゃんが、極一般的な下級炎魔法を放つ。
しかし、灼熱嬢イオちゃんの下級魔法は、一般人の中級魔法と火力が同程度である。
瞬間、私のしょぼい火を上書きして、竈門はごうごうパンを焼き始めた。
「これで下級魔法…。私なんて特級魔法で下級魔法程度の火力しか出ないのに…」
なんだか、少し悲しくなった私だった。
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