第4話
「おめでとうございます! 今夜で第一段階、体力低下の処罰は終わりになりました!」
セチアの学校への初登校から、またもや数日が経った夜。彼女は嬉しそうに告げてきた。
セチアが片手を上げた次の瞬間。俺の身体を苦しめていた、重いだるさが消えていった。
「十日間、処罰とはいえ本当にお疲れ様でした。では第二段階。次の処罰になります!」
ウソのように軽くなった身体の状態に喜んでいる俺に、セチアは再び片手を上げ始めた。
「これで第二段階の処罰の魔法はかけ終わりました。また十日間、頑張ってくださいね」
特に身体は何も変わった様子はない。今度は何が変わったのか、とセチアに尋ねてみる。
「運勢低下です。体力低下よりはキツくないはずですよ。……たぶん」
運勢が低下するだけか。なら、体力低下よりはキツくないな。良かった……と思ったが。
これはキツい……。次の日の下校時に突然、土砂降りになったのだが。止む気配がない。
今日は友人たちと帰ります、とセチアは帰ってしまっていた。運悪く、携帯電話も家だ。
セチアとかが傘を持って迎えに来てくれないだろうか、と思ったが待っても誰も来ない。
この冷たい雨の中、帰るしかないのか……。覚悟を決め、俺は学校の玄関を飛び出した。
数分もしないうちにビショビショになる。十二月の雨に濡れた服が肌に貼りついていく。
寒すぎる。雪になってくれれば良かったのに。そう思いながらも、何とか俺は帰宅した。
「迎えに行きたかったんだけど、ごめんなさい! サンタクロースからの急用があって」
運が悪かった。なるほどそうか、これが運勢低下の処罰なのだ。風邪をひきそうだ……。
早く身体を温めないと、本当に風邪をひいてしまう。すぐにシャワーを浴びた。しかし。
次の日。やはり風邪をひいてしまった。身体がだるい。体力低下の処罰に戻ったようだ。
すぐに治るだろうと思っていたが、なかなか治らず。学校を、数日ほど休んでしまった。
でも、その間もセチアが看病してくれた。処罰を与えてる張本人だが、ありがたかった。
風邪が治ってからも、普段はしない寝坊で朝食ぬきで家を出なければならなくなったり。
道を歩いていたら犬にいきなり吠えられたり、なぜか猫にまでうなり声を上げられたり。
毎週、読んでいた漫画雑誌がなぜかどこにも置いていなくて、読む事ができなかったり。
運勢低下も恐ろしいな……。そう思いながらも数日が経って、いよいよ十日間が過ぎた。
「十日間、お疲れ様でした。……それでは、第三段階。最後の十日間の処罰になります」
第三段階。最後の処罰は『記憶低下』なのだとセチアがうなだれた様子で教えてくれた。
俺は十日後には目の前の少女の事を。セチアの事を、忘れてしまうらしかった。
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