第59話 最近よくあるこの展開は珍百景に登録しましょう
「そうだ、ルセリナちゃん。次の審査のことだけど」
「準備出来そうですか?」
「うん、なんとかね」
よし、それなら次は余裕を持って通過出来そうだ。ベルさんから話を聞いた時は終わったなって思ったけど、世の中意外となんとかなるもんだ。
「おい二人とも、準備って何を」
おやおや、レイズ様ったら気になるようで。じゃあ答えてあげましょう。気になるその答えは……
「内緒」
「内緒」
あ、ベルさんと声がハモった。そういう時ってちょっと笑っちゃうよね。
まあここに一人、笑わない男もいますがね。
「……」
全く、なんてふて腐れた顔でしょう。悪いけどそんな不愉快になったって教えるわけにはいかないんですからね。
「じゃあベルさん、あとは手筈通りに」
「了解」
「レイズ様、悪いんですけど私達はちょっとこれから二人で外しますんで……あれっ?」
体を捻らせると、そこには一人の女性が立っていた。
「よかった、ここにいたのね」
女性はほうっと一息ついて胸に手を当てた。先ほどとは違い、黒を基調としたシンプルな服装に身を包んでいるその女性。
えーと彼女は確か。
「マリア」
そうそうマリアさん。……ん、あれ?
「レイズ様も知り合い?」
ベルさんと遭遇した時もそうだけどこのパターン多いな。既に互いが知り合いだったパターン。
まるでご都合主義の世界。
「知り合いも何も」
レイズ様の視線がサッとマリアさんに送られる。
「俺のパートナー」
「!」
レイズ様のパートナー。
うん、なるほど。この人のパートナーになるとか、どれだけ物好きな女性かと思ったら。そうですか、あなたでしたか。
しかしレイズ様、アリスちゃんといいマリアさんといい、この手の控えめな感じの女の人好きだなー。
言ったら多分殺されるから、絶対言わないけど。
===
「驚いたわ。まさか二人が知り合いだったなんて」
マリアさんはそう言って微かに笑みを浮かべた。
うん、私も驚いたよ。昨日のベルさんに続き、そのセリフ二日連続で聞くことになるなんてね。
「それなら二人で参加すればよかったんじゃ?」
「断る」
「却下です」
それだけは天と地がひっくり返っても絶対にあり得ない。
あーはい、そこベルさん。声を押し殺して爆笑しないように。
「そんなことよりも」
若干不機嫌度合いを増したレイズ様が彼女に問いかける。
「何か用があったんじゃないのか?」
「ああ、そうだったわ。ルセリナさんを探していたの」
ん、私の方?
「そろそろ次の審査が始まるらしいわ」
なるほど、それを伝えるために私を探して。
「早かったですね」
「ええ、どうも一次審査で予想よりも多く人数が落とされていたみたい。それで準備も少なくて済んだって」
「そうなんですか」
へえ意外。一次審査ってよっぽどのことが無い限り大体の人が通過するもんだと思っていたのに。
……ってことは。
「ベルさん。出来るだけ早く次の準備を」
服もまだこんなエレガントな格好のままだし。
「マリアさんも早く……」
「私はもう大丈夫よ」
「みたいですね」
どうりで服装がシンプルになってるわけだ。
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