20

 しばらくすると中からトァムの。


「え!こ、これを!」

「な、なんで下着までぇ!」

「は、恥ずかしいですぅ!」


 半ば悲鳴の様な声が聞こえ、それを打ち消すようなアゲハの。


「そうよ!船長命令よ!」

「25万圓のためよ!我慢なさい!」

「あ、ヤバ!めちゃ可愛い、ご飯三杯はいけるわぁ、ぐへへへ」


 と、下品な笑い声。

 そして扉が開くと、アゲハに付き添われ現れたのは誰も見知らぬ美少女だった。

 肩までの長さの赤い髪は黒いリボンで束ねられ、いつもは隠されている青い瞳の左目が露になり、肉感的な唇には鮮やかな口紅がさされている。

 ひざ丈の鮮やかなからし色ワンピースは嫋やかな体形によく似あい、ご丁寧に白いストッキングと赤いパンプスまで履かされていた。


なれは誰ぞ?」


 ポッカンと口を開けダチュレ。


「角があることから見ると、トァム君、何だろうな」


 と目をパチパチ知させながらユロイス。


「ホウホウ、これはこれは」


 バシリスがいうとエウジミールも。


「こりゃ、また、参りましたな。どこからどう見ても綺麗なお嬢様だ」

「ト、トァム君、可愛い!」


 オクターブの高い声をチャタリが上げるとホランイは目を見開いたまま固まり、リシバは生唾を飲み込む。

 消え入りそうに恥ずかしがり、身を縮めるトァムの周りをグルグル回って眺めつつレイ。


「うんうん、フムフム。これならどこからどう見てもいい所のお嬢様だ。実際、南方人種でも北方人種と上手いことやって大金持ちに有ってる連中は大勢居ますからね。そんなとこの御令嬢って言ったら絶対にばれませんよこれなら。考えましたね船長」


 顔を真っ赤にしてうつむくトァムの横で、小鼻を広げて自慢がましくアゲハは。


「いやぁ、前々からトァム君は可愛いなぁ、女の子の服を着せたら似合うだろうなぁって思ってたのよね。やってみたらホレこの通り!」

「これで問題は解決しましたね。具体的は作戦を立案してゆきましょうか」


 ユロイスがトァムに見とれながら口調だけは冷静に言うと。


「まずは部隊編成、トァムお嬢様の後見人役にはレイ、荷物持ち役にリシバ、私と甲板長、そしてダチュレは店の前で待機、副長、機関長、気嚢長、チャタリは『アゲハ号』で待機ね、あ、話はちょっとそれるけど」


 と、アゲハはリシバとレイを冷ややかに見つめ。


「アゲハ号のキャビンでの部屋割り、トァムは当分悪巧み部屋で寝て頂戴。よくよく考えたケダモノ二匹の中にこんな可愛い娘を置いておくわけには行かないわ」

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