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2週間前の事だ。
空賊島にある居酒屋『軍艦鳥亭』でアゲハは、帝国の南方大陸における最大都市、『拓洋』で店を構えるという古美術商ホトミ・トメオと出会った。
座礁した飛行船の船室をそのまま使った空賊しか出入りしない居酒屋には、決してそぐわない高そうな背広に身を包んだ中年の優男。
ごった返す店内でアゲハの姿を認めた彼は、息せき切って近寄ると、鼻の奥が痛むほどの強烈な香水のにおいを振りまきつつ。
「ああ、やっとお会いできた。あなたが『空賊姫』と名高いアマツ・アゲハさんですね!噂通りの美人だ!まさに石炭籠の中の宝石ですよ」
と、歯が浮いて抜け落ちんばかりの甘い言葉をまくしたてたあと、彼は本題に入った。
「父の代から探し続けて来たカンジュ文明の秘宝中の秘宝コケモモの壺。やっと見つけたと思ったらカオの野郎に目の前で掻っ攫われました。うちの従業員にスパイを紛れ込ませるなんて卑劣な手でこちら設定していた最終値を掴んでいたんです。おかげでわずかな差であの壺は奴の手に・・・・・・悔しいなんてもんじゃありませんよ!」
ホトミはそう悔しさを言葉の一文字一文字に込めたように言うと、葡萄酒のグラスを一気に空け。
「それで、私も卑劣な手を使ってやろうと思いましてね。2週間後、奴は帝国本領にいる買い手の元に壺を届けに行くんですが、そこをあなたに襲って壺を奪っていただきたいんです。乗り込む船は帝国航空郵船の白鷺丸船室は特等の102。私も奴の女に金を掴ませて情報を集めました。悪には悪、卑劣には卑劣ですよ」
と、今度はいかにもと言うような悪い笑いをアゲハに見せて2杯目のグラスを煽った。
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