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キャビン第二甲板の食堂に、見張りの為船橋にいるダチュレ以外の乗員が全員が集まっていた。
テーブルの上にはコケモモの壺と、気を効かせトァムが出した皆の分の飲み物。
自分専用のホーローのマグカップから立ち上る湯気を気の抜けた表情でぼんやり見つめつつ、子供に捨てられた人形の態で椅子に腰かけるアゲハは。
「まず、船の損害状況」
「右舷第一気嚢の上に儂の握りこぶし大の穴が二つ空いとったわい。一応鉄板を溶接して気嚢の穴は二つとも塞いで浮素ガス漏れは心配ないが、外は穴が開きっぱなしじゃ、その他にも砲弾の破片でざっと見ただけで20か所の穴やら亀裂が出来とった。あと、船橋の窓も5枚、交換が必要じゃの。それにエンジンも若干のオーバーホールをせにゃならん。こりゃドックに入らんといかんのぉ」
バシリスに続いてエウジーミル。
「第一気嚢の損傷と緊急ベントで、かなりの量の浮素ガスが流出してしまいました。一応航行は可能ですがかろうじて浮いている程度でまともな機動が出来る状態ではありませんな。ま、早急に補充が必要でしょう」
アゲハは額をテーブルに着け、うつ伏せのままで。
「ああ、お金が出てゆく。せっかく5千圓も稼げるって言うのに、幾ら残るのかなぁ」
「船長、その5千圓も当てにできませんよ。我々ははめられたかもしれない」
ハッと顔をあげ発言者のユロイスを睨みアゲハは。
「それ、どういう事?」
「まずは流星の出現、たまたま哨戒中に我々を見つけたなんて考えられません。何者かによるタレコミを当てにしてあの空域にいたと考える方が自然です。そして極めつけは時限爆弾。25万圓の壺に時限爆弾を仕掛けるなんてありえないでしょう。」
「それ、全部仮定でしょ?『流星』の艦長カラバミの糞ジジィは空賊狩りに血の道を上げてるボケ老人よ、航空軍内部でも持て余されてるって専らの噂じゃない。あの辺をウロウロしててもおかしくとも何ともない。それに壺の爆弾は、その、あれだわ、空賊に取られるくらいならぶっ壊しちまえって仕掛けたのよ、ウン、そうだ間違いない」
冷ややかなユロイスの視線を視線を感じたアゲハは。
「じゃぁ、副長。もし私たちが嵌められたとしてその目的は何よ?」
「保険金詐欺でしょう、そしてこの壺はニセモノである可能性が極めて高い」
「つまり、副長が仰りたいのはこう言う事でしょ?」
と、砂糖ミルクたっぷりのコーヒーを啜った後、レイが口をはさんだ。
「依頼主は壺を競り落とした奴とグルで、ニセの壺に保険金を掛けて我々に襲わせ、証拠隠滅の為に帝国航空軍に垂れ込んで我々を消そうとした。時限爆弾は航空軍が我々を仕留めそこなったときのそれこそ保険だ。これなら辻褄はあう。船長、この話を受けた時の状況をよっく思い出してください」
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