三代目『勉強家』バルコニー
よろしくま・ぺこり
第1話 わたしは独学者です
こんにちは。草原守拙です。
以前、孤雲庵主人が三代目『勉強家』を自称して、お目汚しをしていました。その彼も噺家、萬願亭洒落となり『勉強家』を中退したのですが、我々の作者は「人生死ぬまで、好きなことを勉強し続ける。でも、嫌いなこと理解不能なことはなかったことにする」というポリシーを捨てたわけではなく、またしてもわたしにお鉢が回って来ました。
さて、目下のわたしの興味は、古代・飛鳥時代から『応仁の乱』が自然終了すりあたりの歴史小説を読むことですが、問題が三つあります。一つ目は、小説の題材が片寄っていること。二つ目は読みたい小説を入手できないこと。三つ目は日本史上では有名なのに小説になっていない事件がたくさんあることです。
二については日本の出版業界が小説を知的文化財と考えず、商売道具としているので仕方ありません。
問題は三です。歴史学の学者先生が著した研究書はたくさんありますが、わたしはそんな高額で小難しい書籍を読む気はサラサラのサラサーティです。会話文のない書籍を読むと一ページで睡魔に襲われます。わたしは小説が読みたいのです。思いついただけでも『藤原広嗣の乱』『恵美押勝の乱』『藤原薬子の変』『菅原道真の左遷』『上総忠常の乱』など、日本史上には面白い材料がたくさんありますが、だいたいが『源平の合戦』『太平記』『戦国三英傑』『幕末、勤皇の志士』の周辺の小説ばかりです。わたしだってその手の小説を学生時代には読みました。でも、同じ題材で、ただ視線を変えただけの小説の乱立に「小説家も活計を稼ぐために手を抜いている」と思わざるを得ません。中には既存の小説を資料にして小説を書いていた人もいましたね。最近はとんとお名前を見かけませんが……
まあ、いくら古代史ブームだなんだと言っても、社会の需要がなければ本は出ません。今、書店は渋沢栄一ものばかりですが、そのうち北条義時ものが平台の一角を占めるでしょう。『大河ドラマ』は偉大ですね。
それから、わたしは仏教と日本神道にも様々な理由で興味があります。しかし、小説にできる題材と言えば、ゴーダマ・シッダルータ、まあブッダとか釈迦とか言われる方、それに司馬遼太郎が書いていますけど空海くらいですかね。最澄は小説になる程劇的な人生を送っていないのでしょうか? ああ、親鸞は五木寛之が書いていますね。日蓮は変なとこから出てそうでねえ。なんにしても、小説の題材にできるのは僧だけで、釈迦以外の仏は主人公にできません。しかし、仏はたくさんいらっしゃいますねえ。とても覚えられません。
もっと難しいのは日本神道の八百万の神で、天照大神が天皇家の先祖とされる以上、令和になっても下手なことは書けません。それになんでもかんでも神がいるので系統とかわかりませんし、天照系ではない神、大国主命や道祖神や神明社などの民間信仰もきっと小説にはなり得ません。
すると、何か新しいテーマを探さないといけないのですが……思い当たるものがありません。
何か、人生の掉尾を飾る、ライフワークはないものですかねえ?
新型コロナでステイホーム中なので、おウチでできるものがいいです。ただ、手先が不器用なので、クラフト系はできません。数学・理系は嫌い。方向音痴なので地理、地政学も大嫌い。ミステリーは食傷気味。小説は読まれないから承認欲求が満たされません。架空国家設立は文章だけでは無理でビジュアルがあればいいのですが、わたしのパソコンにはペイントもドロー系もインストールされていませんし、スキャナーもないので、手描き、加工も不可能です。
ああ、こうなったら、酒と女に溺れるか……一番不可能な妄想上の話になってしまいました。
ちょっとフォーリンラブ、じゃなくて考えます。
さようなら。
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