第72話

 私たちが秘密書庫の場所を探って動いているのを、公爵が黙って見ているだけのはずがない。必ず何か仕掛けてくるはず…

 …また偽りの告発文だろうか…?それとも次は自身が乗り込んできて抗議でもするつもりなのだろうか…?

 内容はともかく、そんな私の予想は見事に的中するのだった。


「おい!来たぞ!」


 レブルさんが足早に私たちの元へと駆け寄る。その手には一通の手紙。…私は反射的に嫌な予感がした。前にも似たようなことがあったから…

 フォルツァがその手紙を受け取り、内容へと視線を移す。私もフォルツァの横から手紙をのぞき込む。


「…やれやれ、今度は法院にお呼ばれみたいだ」


 …ということは、今度は司法のほうに圧力をかけて私たちを追い落とそうという腹積もりなのだろう。まったく次から次へとよくも思いつくものだ…


「法院か…いよいよ公爵も手段を選ばなくなってきたな」


 レブルさんがそう言い、私もうなずいて同意する。しかしいくら公爵といえども、法院に圧力などかけられようはずもない…つまり公爵はかなり追い詰められている様子がここからうかがえる。


「僕らの目的に公爵も気づいたんだろう。目的は時間稼ぎだろうか…?」


 フォルツァがそう推測する。私も同じ考えだけれど、あの公爵の事だからまたなにか隠し玉を持っているんじゃないかと、若干の不安を感じる。


「それで、召致の日付けは?」


「えっと…3日後だ」


 3日か…告発の時も思ったけど、相変わらず公爵は時間で攻撃するのが上手だな…私たちも同じ手を使えないものだろうか…?

 しかし3日という厳しい制限にもかかわらず、フォルツァの表情はやる気で満ちあふれている。


「法院召致という事は貴族達はもちろん、公爵に関係する全ての人間が集まるんだろう。公爵の悪事を暴くには絶好の場だ。そこですべてに決着をつけよう」


 フォルツァが言ったその言葉に、私もレブルさんも強くうなずく。


「3日以内にすべての証拠をそろえるわけか。こりゃ忙しくなりそうだ」


 腕を組み、苦笑いを浮かべながらそう言うレブルさん。けれどその表情もまたやる気で満ちあふれている。そして私もレブルさんに続こうとしたた時、意外な人物が声を上げた。


「僕も!僕も手伝うよ!」


 …いつの間にか、シグナ君が私たちの話を聞いていたらしい。…気持ちはすっごくうれしいけど、巻き込んでいいものかどうか、少しばかり考えを巡らせた。


「シグナ君…だけど…」


 しかしシグナ君の決意は固く、その瞳もまたやる気と信念に燃えていた。


「お父さんの無念を張らさなくちゃいけないんだ!僕がやらなきゃ!」


 その勇敢な思いを、いったい誰が止められようか。私たち3人は互いに顔を見合わせ、意思を確認した。


「分かった!手伝ってくれ!」


「…まぁ、いいだろう」


「レブル君、よろしくね!」


 頼もしい助っ人も加入したところで、私たちは反撃への大きな第一歩を踏み出した。

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